これまでにエンジニアやリーダーとして何気なくプロジェクトマネージャーと関わってきていても、いざ自分が担当するとなると不安になります。
プロジェクトマネージャーは難しい仕事だからこそ求められることが多く、失敗すると”ダメなPMだ”と言われることだってあります。大変だからこそみんな出来るわけではないし優秀なPMは付加価値が高いといえます。
この記事では、ダメなプロジェクトマネージャーの特徴・対応方法をまとめてご紹介します。
反面教師として学び、まだプロジェクトマネージャーとしての経験が浅い方の参考になればと思います。
この記事の筆者|きなこ

- 現役のプロジェクトマネージャー
- 国内大手Sier勤務(2022年売上ベース国内最上位)。13年目
- プロマネ歴1年を経過。初心者プロマネ
- 3児のママ
- 30代半ば
私はプロジェクトマネージャーの役割を担うようになって1年が経過しました。
私自身がこの1年で失敗を重ねて得た学びや、これまでに一緒に働いて上手くいかなかったプロジェクトマネージャーの共通点を”ダメなプロジェクトマネージャーの特徴”としてまとめてご紹介します。
この記事の結論
- ダメなプロジェクトマネージャー特徴と対応方法を知ることができる
- 反面教師として学び、自分の成長につなげることができる
ダメなプロジェクトマネージャーとは

プロジェクトマネージャーの役割と責任
プロジェクトマネージャーは、プロジェクトの計画、実行、監視、制御を担当する役割を持ち、プロジェクトの成功に向けてリードすることが求められます。
また、プロジェクトチームや関係者とのコミュニケーションを円滑に行い、スケジュールや予算の管理、リスクの予測と回避、品質管理など多岐にわたる責任があります。
ダメなプロジェクトマネージャーの定義
ダメなプロジェクトマネージャーとは、プロジェクトを失敗に導くような行動や判断をするマネージャーのことを指します。
ダメなプロジェクトマネージャーは、プロジェクトの成功に必要なスキルや能力が不足していたり、チームとのコミュニケーション不足に陥ったりすることがあります。
また、プロジェクトのスコープや目的が明確でないまま進めたり、リスク管理を怠ったりすることもあります。
ダメなプロジェクトマネージャーの影響

プロジェクトに与える影響
ダメなプロジェクトマネージャーは、プロジェクトに深刻な影響を与える可能性があります。
プロジェクトの目標を達成できないため、スケジュールの遅れや予算超過を引き起こすことがあります。
また、指示や決定が不明確であったり、的外れであったりすることがあるため、プロジェクトの品質や成果物の正確性が損なわれることがあります。
ダメなプロジェクトマネージャーがチームと十分なコミュニケーションを取らない場合、プロジェクトのリスクや問題が見逃され、プロジェクトの成功に向けた行動が遅れることがあります。
組織に与える影響
ダメなプロジェクトマネージャーは、組織にも影響を与える可能性があります。
プロジェクトが予算やスケジュールに従わなかった場合、組織に損害を与える可能性があります。また、ダメなプロジェクトマネージャーが不適切な決定を下した場合、組織の信頼性や評判を損ねることがあります。
ダメなプロジェクトマネージャーの特徴・対応方法

ダメなプロジェクトマネージャーの特徴をあげていきますが、もしもご自身が当てはまっている場合でも落ち込む必要はありません。
特徴とあわせて対応方法も述べていきますので、まずはチェックして改善につなげましょう。
※以後、プロジェクトマネージャーはPMと記載します。
資料作成が仕事と思っている

PMはとにかく作るべき資料がたくさんあって手を動かすことが多いです。
プロジェクト計画書、各会議のアジェンダ、スケジュール表、品質分析資料、課題管理表、などあげるとキリがありません。
そうなると資料作成に追われることになるのですが、ここで気を付けるべきなのが集計作業や資料作成などの事務作業を仕事だと思ってしまうことです。
価値があるのは事務作業そのものではありません。
対応方法|アクションを促すフィードバックまで行う
事務作業の先にある原因分析や改善策など現場のアクションを促すフィードバックに価値があります。
以下に、それぞれのケース毎の対応方法をまとめます。
スケジュール管理
例えば、スケジュール表で「1週間の遅延」と報告されている作業項目は、これで終わりではなく「なぜ遅延しているのか」「対策はどうするのか(誰が・いつまでに・何をするか)」「予定どおりに戻る見込みはいつ頃か」をまとめるまでが進捗管理です。
課題管理
課題管理の場合は、課題を集計したり期限を記入するだけではダメです。課題は放置して解決するものではなく、解決を阻害する原因があります。
PMがファシリテーションして課題が停滞する阻害要因を特定し、どのように解決するのかアクションを整理し、滞りなく解決できるまでフォローするところまで行う必要があります。
品質管理
品質分析も同様です。レビューやテスト結果を集計して、品質指標値(この範囲に収まっていることが多いという目安の値)より上回っている、もしくは下回っている。という機械的な報告をまとめるのでは意味がありません。その集計結果から、プロジェクト特性を踏まえて問題あるのか、ないのか。問題あるならどのようなアクションを取るのか決めることが大切です。
全体を俯瞰できない

PMはプロジェクト全体を統括する必要があるので、プロジェクトの目的と全体像を抑えて関係者へ共通認識を持ってもらいながら推進する必要があります。
プロジェクトの全体像から計画やアクションを具体化していくのではなく、システムの仕様や作業内容など、枝葉の話しばかりするPMは要注意です。
こんなPMいないのでは。と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、プロジェクトマネジメントが苦手・やりたくない・適性がない、けれどPMを任されている。という人はSierには以外と多く枝葉の話しばかりに気を取られるPMは案外います。
枝葉の話しばかりする人は、プロジェクト関係者間で共通認識を持つ重要性がわかっていない可能性があります。
対応方法|図として視覚的にまとめる
全体俯瞰が苦手なPMは、図を作ることを心がけると良いです。視覚的にまとめることで枝葉の話しに偏ることが抑えられますし関係者間で認識をあわせやすいです。
大阪府立図書館のシステム構成図が公開されていましたので参考までに掲載します。
参考:大阪府立図書館情報システム構成図 令和3年4月1日現在
プロジェクトの場合、システム構成図は”現在”→”プロジェクト実行後”など各フェーズで取りまとめます。
例えば、移行プロジェクトだと
(1)現在の状態
(2)移行後の状態
をそれぞれ図でまとめます。
そして(1)と(2)を比較することで、ギャップを埋めるために必要なリソースやプロセス、アクションの優先順位を明確にすることができます。
プロジェクト全体を俯瞰して視覚的にまとめることで関係者間で認識をあわせながら効率の良い進め方を議論できます。
計画が雑

計画=プロジェクトなので、計画が雑なのはPMとして致命的とも言えるのですがプロジェクト計画が甘いままスタートを切ってしまっていることがあります。
計画が甘いままスタートしないといけない状況に陥るのは、PMがダメな場合もありますが、一人で膨大な仕事量を抱えてしまってやむをえずそうなった。などの事情があるのかもしれません。ですが、どんな事情があるにしてもプロジェクトにおいて計画は最重要です。
プロジェクト計画があいまいだと、必要なリソース(人・モノ)やタスクが不明確になり、そのため予算やスコープやスケジュールも不明確になります。
対応方法|関係者を巻き込んでプロジェクト計画を策定する
計画が雑だとプロジェクトが失敗するのは火を見るより明らかです。成功に導くプロジェクト計画を策定するためには、関係者を巻き込むことが重要です。
関係者多すぎると収拾がつかなくなるため巻き込む人は絞ります。依頼主・管理職は必須で巻き込みましょう。
依頼主は、要件や仕様をはっきりしてもらうために入ってもらいます。プロジェクト推進する側として認識を持ってもらうことでコミュニケーションが取りやすくなります。
管理職は、プロジェクト計画を策定するために必要な人的・時間的なリソースを割いてもらうために入ってもらいます。
無理なスケジュールを要求されている場合は、依頼主・管理職それぞれに無理なスケジュールだと理解してもらい計画策定・プロジェクト推進に必要な時間を調整しましょう。
上記以外は、プロジェクトの実現性を高めるために”現行システムの担当者”や”技術的な有識者”などに必要に応じて入ってもらいましょう。
問題を定義できない

顧客要求の理由を把握できてなくて「言われたからやっている」ケースなどが挙げられます。
顧客は「〜してほしい」と手段をリクエストする場合がありますが、理由を聞くと別の手段が良い場合があります。
例えば、顧客から「ワークフローシステム(※1)を導入したい」という要求があって見積もり・提案を行ったが、実は現在使ってもらっているグループウェアに顧客要件を満たすようなワークフローの代替となる機能があることが後日判明。ワークフロー導入システムの商談は消滅した。などのケースです。
※1:各種申請や稟議などの業務手続きをデジタル化するシステムのこと
顧客は「新たにワークフローシステムを導入する」ことがやりたいのではなく、「各種申請や稟議などの業務手続きのデジタル化」がやりたいことです。
目的を抑えて正しく問題を定義できていれば、「現在ご利用いただいているグループウェアの機能を使ってみてください」という案内で済むことであり、お互い無駄な労力を使わずに済んだかもしれません。
対応方法|「イシューからはじめよ」で学ぶ
前述の例より詳しい内容になりますが、問題を定義することが苦手な場合は「イシューからはじめよ」という本を読むことがおすすめです。この本は全てのPMが読むべき本だと思っています。
別の記事でこの本を紹介しています。もし興味があれば読んでみてくださいね。
≫プロジェクトマネージャー必見!「イシューからはじめよ」の実践で成果を劇的にあげる
問題を解く能力も大切ですが、そもそも「問題の定義」に失敗すると、どんなにがんばって問題を解いても成果はあがりません。
著者の安宅和人さんは、東京大学→マッキンゼー入社→イェール大学→マッキンゼー復帰→ヤフーCSO、慶應義塾大学教授、Zホールディングス、データサイエンティスト協会理事
とものすごいキャリアを持つ有名人です。
最近では著書「シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成」も話題になりました。
興味ある方は「イシューからはじめよ」手にとって読んでみてくださいね。
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顧客と交渉できない

顧客の要求をどんどん受けれてしまい、予算に苦しみながらプロジェクトを推進するPMも問題です。
たしかに、顧客に対して全て杓子定規で融通をきかせないと信頼関係を構築することが難しくなります。だからといって要求を全て受け入れるとWin-Winの関係が築けません。必要な主張はすべきです。
対応方法|トレードオフ前提で議論する
トレードオフとは何かを実現するためには何かを犠牲にしなければならない関係のことです。
顧客要求を予算内に収めるためには、要求をリストに整理して「追加要求を対応する場合は、既存要求の何かを先送りにする必要がある」と理解してもらう必要があります。
トレードオフはシンプルに整理すると分かりやすいため、よほどのことがない限り交渉に乗ってくれます。
判断できない(方針を決められない)

意思決定はPMの重要な仕事の一つです。メンバーから判断を仰がれてもYesともNoとも言わない。そうなるとプロジェクトは進みません。
対応方法|情報収集と選択肢の洗い出し
判断できない原因は、情報不足が考えられます。
判断するためには
「情報収集→選択肢の洗い出し→選択肢ごとのリスクの検討→判断(方針の決定)」
という流れになります。
判断できない原因は、判断に至る前にやるべきことが不足しているためです。必要な情報を集めて、選択肢とリスクを整理できればおのずと判断は可能になります。
マインドとしては、失敗を極度に恐れないことが重要です。
怒られないことがPMの仕事の最大目的ではありません。判断までのプロセスをちゃんと整理して記録を残しておけば、少なくともその 判断に至った経緯の説明はできます。結果的に判断に失敗したという場合は、振り返って学びにしましょう。
丸投げ(指示を出すだけでフォローしない)

指示を出しっぱなしで、その後の状況を確認せず結末がどうなってるか把握していない。
ひどいケースだと次々に新しい指示を出してしまうこともあります。丸投げはPMとして無責任です。
対応方法|タスクの見える化

タスクを見える化してチーム内でシェアできるようにします。見える化することで状況を把握し優先度を判断します。
ツールとしては、TeamsのPlannerでも、Redmineのチケットでも、タスク管理できるツールはたくさんあります。
極論ですが、ホワイトボードに付箋を貼って管理しても構いません。タスクを見える化してチーム内でシェアするという目的が達成できることが重要です。
非同期のコミュニケーションができない

非同期コミュニケーションとは、チャットやメールなど個人の都合が良い時間に連絡を取り合うことです。
一方で、同期コミュニケーションは対面やオンラインでの会議、電話などの相手と同じタイミングで情報を共有することです。
そんなことチャットでいいじゃない。と思うようなことでもとりあえず集まって話していると生産性は上がりません。
昔は「すぐに顔をあわせて話す人」がコミュニケーション能力が高いと言われていましたが、現在では「コミュニケーション方法を使い分けつつ、非同期でコミュニケーションできる人」がコミュニケーションに長けている人です。
対応方法|コミュニケーション方法を計画に含める
どのような時に非同期コミュニケーションをとるか、集まって話すかを整理してプロジェクト計画に含めてチームに周知します。
例えば、以下のように使い分けます。
- 同期コミュニケーション(対面やオンラインでの会議)
伝える内容が複雑。緊急な内容。意見交換が必要な内容。 - 非同期コミュニケーション(Teamsチャット・メール)
上記以外。個人的な連絡以外は、プロジェクトや各チームなどのグループ単位で情報共有すること(個人単位だと情報伝達ミスが発生したり、ミスに気づかないまま業務を進めてしまう危険性があるため)。
無駄な会議を続ける

予算に余裕があるプロジェクトはほとんど無いと思います。無駄な会議は著しくプロジェクトの生産性を下げつつ無駄な工数を使ってしまい、更に予算を厳しくします。
対応方法|会議体設計を見直す
プロジェクトでの会議体設計はとても重要です。プロジェクトの会議体設計は、各会議をリストにして「目的とゴール、参加者、開催頻度」をプロジェクト計画にまとめます。
会議がうまくいっていないと感じたら会議体設計を見直しましょう。不要な会議は無くします。無くせない会議は、頻度を減らすか参加者を絞ることを検討しましょう。
なんでも自分でやろうとする

特にプログラマー→システムエンジニア→プロジェクトリーダーと段階を経てプロジェクトマネージャーを担当している人には多い傾向があります。
自分でやった方が早い。と現場作業を優先するとプロジェクト全体の推進が滞ります。
PMは現場作業でなくプロジェクトマネジメントを優先すべきです。
ここで注意すべきなのは「PMは手を動かすべきではない」と勘違してしまうことです。今回の指摘は「現場作業に入り込んでPMとしての役割を果せないのは本末転倒」ということです。
対応方法|PMが作るべき成果物を確認する
PMはとても手を動かす役割です。
プロジェクトの要件や計画をまとめる、ファシリテーションする、成果物のイメージをまとめたり流用素材を用意する、会議アジェンダを作る、報告書を作成する…。
PM自身がやるべきことで手を動かせないとプロジェクト全体の生産性を下げてしまう危険性が高いです。
現場作業はプロジェクトメンバーを信頼して頼りましょう。現場作業が滞るなら、原因を突き止めた上でPMとしてスケジュール調整や要員調整などで対策を検討しましょう。
主観的に判断してしまう

プロジェクトマネージャーは様々な立場の関係者のバランスを保ちながら仕事を進めます。
ですので、データや根拠など「客観性」を大切にすることが非常に重要です。
「自分はこう思う」など主観的に発言し仕事を進めるタイプの方は客観性を持つように意識しましょう。
対応方法|文字に起こす・意見を聞く
客観性を持つためにどうすれば良いかを考えてみました。「文字に起こす」「関係者の意見を聞く」の2つ意識すると有効だと思います。
文字に起こすことで自分自身が客観的にチェックできます。
文章は「事実」と「意見」に分けて整理しましょう。また、事実はできるだけ数値で定量的に誰が見ても分かるようにまとめましょう。
「事実」と「意見」に分けて整理した文章は、打ち合わせ資料などに記載したり、チャットなどで連携したりしてプロジェクト関係者の意見を仰ぎます。
自分と違う役割や視点を持つ人の意見を聞くことが客観性を持つために手っ取り早い方法です。
ダメPMにならないためには「自分時間の確保」から
多くの経験を積み重ねて自己流のマネジメントノウハウで上手くプロジェクト運営できる人は問題ないです。
ですが、経験が浅いPMだと自己流ではなかなか上手くいきません。
本を読んで知識を身につけたり、資格を取得するなどして現場でどのように取り組んでいけばいいのかを学びましょう。
忙しい方向けに、時間術の記事をまとめていますので興味あれば読んでみてくださいね。
時間術のまとめ記事
≫【人生変わった】共働きSEワーママが実践する時間術とは?仕事も家庭も両立できる秘訣を大公開!
まとめ:ダメなPMの特徴から学んで自分の成長につなげよう!
この記事では、ダメなプロジェクトマネージャーの特徴11個とぞれぞれの対応方法をまとめました。
《ダメなPMの特徴》
- 資料作成が仕事と思ってしまっている
- 全体を俯瞰できない
- 計画が雑
- 問題を定義できない
- 顧客と交渉できない
- 判断できない(方針を決められない)
- 丸投げ(指示を出すだけでフォローしない)
- 非同期のコミュニケーションができない
- 無駄な会議を続ける
- なんでも自分でやろうとする
- 主観的に判断してしまう
反面教師として参考にして、少しでもPM現場の役に立てるとうれしいです。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
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