プロジェクトマネージャーは一般的に激務と言われていて、未経験の方や初心者の方は不安におちいりがちです。ですが、役割や悩むポイントを抑えておくことで、プロジェクトマネージャーを担当する時の不安が軽くなります。
この記事では現役のプロジェクトマネージャーの私が理解した役割や仕事内容、問題点などの知識を整理してご紹介します。
私はもともとリーダー向きな性格でないと自負しているため危機感を持ち自分なりにコツコツ勉強しています。
この記事の筆者

- 現役のプロジェクトマネージャー
- 国内大手Sier勤務(2022年売上ベース国内最上位)。13年目
- プロマネ歴は1年の初心者
- 3児のママ
- 30代半ば
【結論】プロジェクトマネージャーは激務。ポイントを抑えて安全なプロジェクト推進を
《この記事で分かること》
- プロジェクトマネージャーの役割
- プロジェクトマネージャーに必要なスキル、向いている人・向いていない人
- システムエンジニア未経験でもプロジェクトマネージャーになれる
- 過去にいた炎上させるプロジェクトマネージャー(実話)
- 知識やスキルを身につけるためには「自分時間」を確保することが重要
では、さっそく解説していきます。
プロジェクトマネージャー(PM)の役割・仕事内容

プロジェクトマネージャーとは、システム構築などのプロジェクトを円滑に推進するために統括する仕事を担う人のことです。プロジェクトマネージャーの仕事は、プロジェクトが成功するか否かに大きく関わる重要な役割です。
PMの役割
プロジェクトマネージャーは、プロジェクト全体を見通した上で意思決定を行い、『納期までに成果物を完成させるようにQCD(品質・予算・納期)を管理してプロジェクトを推進する役割』を担います。
PMがやること
プロジェクトマネージャーは、プロジェクト全体を管理するのでやることは多岐にわたります。その中でも重要な仕事は以下の7つです。
プロジェクト推進に失敗しないためにポイントを抑えておきましょう。
企画・提案
プロジェクト初期の段階では、顧客に対して自社営業と共同で企画・提案を行います。プロジェクトの目的や実現手段、必要な作業や機材・ソフトウェアの見積りを取りまとめて納期や予算を明確にします。
プロジェクト計画の策定
プロジェクトの目的を達成するための計画を文書にまとめます。
プロジェクト開始前に、以下を取りまとめてプロジェクト関係者全員に共有します。
《プロジェクト計画の主な項目》
- 背景や目的
- 方針
- 対応範囲
- 実現手段
- スケジュール
- 体制
- リスク
など
プロジェクト計画はプロジェクトの成功・失敗を左右するような大切なものです。カタチだけの文書にしてはダメで、システムエンジニアだけでなく関連部署や営業・顧客含めたプロジェクト関係者全員で共通の認識が持てるように説明しましょう。
プロジェクトチームの編成
プロジェクト計画の内容にもとづいて、必要な要員を調達してプロジェクトチームを編成します。業務アプリ・インフラ・ネットワークなど各チームが存在してプロジェクトリーダーがいる場合は、プロジェクトリーダー経由で各メンバーに具体的な指示を出してもらいます。
プロジェクトチーム編成は、プロジェクトの成功にとって重要な役割を担うため、適切な要員を選定し、効果的なチームワークを実現することが重要です。
進捗管理
プロジェクトの進行状況をチェックして管理します。
チェックするのは
- スケジュール
- 予算
- 品質
- リスク
などです。チェックすることによって、プロジェクトは”スケジュールを予算内で遂行できているか”を確認します。プロジェクトの進捗管理により、リスクを早期発見し対処することができます。
関係者間の対人関係のサポート
プロジェクト各チームのメンバーや営業、顧客など、それぞれ立場や役割が異なるのでプロジェクトを進める上で意見の対立が起きることもあります。
対人関係の問題は甘くみてはいけず、放置すると必要な情報がいき届かず進捗に影響を及ぼすことも考えられます。
成果物のレビュー・納品
計画→要件定義→設計→開発→テストの各フェーズでの成果物・納品物をレビューし、品質をチェックすることもプロジェクトマネージャーの業務の一つです。
運用・保守
Sierの場合、顧客の方針によってシステム稼働までではなく運用・保守も引き受ける場合もあります。運用・保守プロジェクトは、システム構築プロジェクトとは違って本稼働に向かって推進するというより、日々の安定稼働のためにマネジメントを行います。
主に、メンバーの作業管理やQA・要望対応、障害対応の管理を行います。
プロジェクトマネージャー(PM)とプロジェクトリーダー(PL)の違い

プロジェクトマネージャー(PM)とプロジェクトリーダー(PL)は、役割や権限に違いがあります。
✔️プロジェクトマネージャーは、プロジェクト全体の管理者で、プロジェクトの成功に向けた戦略の立て方や実行計画、QCD(品質・予算・納期)の管理に責任を持ちます。
✔️プロジェクトリーダーは、プロジェクトチームを統括して指示を出し、チームメンバーがタスクを遂行するために必要な管理を行います。
ご参考|プロジェクトマネージャー(PM)の年収

プロジェクトマネージャーはプロジェクト全体を管理するのでやることが多く、決して楽な仕事とは言えません。では、年収はどうなっているのでしょう。
日本におけるプロジェクトマネージャーの年収は、いろいろな要因によって異なります(例えば、業界、経験、地域、会社の規模などが影響)。
経済産業省のレポートによると、左から2番目がプロジェクトマネージャーの平均年収となっており【891.5万円】となっています(正社員・フリーランスの全体平均)。
引用:経済産業省|IT関連産業の給与等に関する実態調査結果(平成29年)
レポートのとおり、他のIT関連職種と比べるとプロジェクトマネージャーの年収は高水準といえます。
ただし、上記は一般的な数字で実際の年収は個人の能力や経験、業界などによって大きく異なります。
大手SierでPMとして働く筆者の年収
ご参考までに現役プロジェクトマネージャーの筆者と、プロジェクトマネージャーとして働いていた頃の夫の年収は以下の通りです。
《筆者:きなこ》
年収 560万円
- 現役のプロジェクトマネージャー
- 短時間勤務
- 国内大手Sier勤務(2022年売上ベース国内最上位)。13年目
- プロマネ歴は1年の初心者
- 保有資格:応用情報技術者、基本情報技術者
《夫:じょう》
年収 890万円 ※会社員の頃
- きなこの元同僚(元プロマネ&コンサル→2022年フリーランス)
- プロマネ歴7年
- 保有資格:ITストラテジスト、応用情報技術者、基本情報技術者、他ベンダー資格(アジャイル開発、クラウド、運用保守など)
PMに必要なスキル8つ

プロジェクトマネージャーは、プロジェクト全体を見据えて推進する役割であるため、いろいろなスキルが必要です。以下は一般的に必要なスキルの例です。
✔️①プロジェクト管理スキル
PMBOKなどのプロジェクト管理のフレームワークや手法についての知識を有していることが望ましい。
✔️②コミュニケーションスキル
プロジェクトチーム、ステークホルダー、上司と円滑にコミュニケーションを取れるレベルの話し方や聞き方が必要。また、顧客など様々な立場の人から要件変更や調整を求められることがあるため交渉力も必要。
✔️③プランニング
プロジェクトの戦略、目標、スコープ、スケジュール、予算などを計画することができること。
✔️④スケジューリング
タスクやリソースをスケジューリングし、期限を遵守することができること。
✔️⑤モニタリング&コントロール
プロジェクトの進捗状況を監視し、必要に応じて調整を行うことができること。
✔️⑥リーダーシップ
チームを統率し、目標に向けた行動を促すことができること。
✔️⑦リスク管理
プロジェクトのリスクを評価し、対処することができること。
✔️⑧問題解決
問題を正しく定義できること。また、問題を解決するための戦略を考え出し実行することができること。
上記は一般的なスキルであり、実際には担当するプロジェクトの業界や特性によって必要なスキルが異なる場合があります。
PMに向いている人の特徴7つ

プロジェクトマネージャーに向いている人の特徴をご紹介します。
✔️①コミュニケーションを取ることが得意
プロジェクトマネージャーは、社内外問わず多くの関係者とやりとりをするためコミュニケーションが得意な人は有利になります。様々な立場の人と一緒に仕事をするので、時には正論を言いたくなる気持ちを抑えて”相手の立場を立てつつ自分の考えを伝える”ことが必要なこともあります。
話すのが得意じゃない人は、資料作成する能力を磨くことがおすすめです。分かりやすい資料が作れる口下手をカバーできます(僕がそうです)。
✔️②鈍感力・ストレス耐性がある
プロジェクトが大きくなると予算が大きくなり、しかも先が見えずらく不安にかられることも多いです。その上、関係者も多くなるのでいろいろな立場の人が言いたいことを言ってきます。全てを受け止めることは難しいので受け流す力やストレス耐性が必要になります。
プロジェクトマネージャーはメンバーを牽引する立場なのでイライラしたり感情的になるとプロジェクトに悪影響を及ぼすことがあります。
✔️③問題を正しく定義できる
そもそもの問題の認識がズレていると、施策が全て無駄になります。
例えば、顧客の要求を鵜呑みにして的外れなアクションを進めていた。ということは現場で往々にして起きます。
効率的にプロジェクト推進するためには「問題を正しく定義すること」がとても重要です。
✔️④舵取りすることが得意
プロジェクトマネージャーは、関係者が共通認識を持って効率良くゴールに向かえるように引っぱることが最も重要な仕事です。そのため、プロジェクト計画書や移行計画書などの各種計画書を取りまとめてチームの舵取りを行う必要があります。また、プロジェクトでは会議が頻繁に行われるのでファシリテーション(会議を円滑に進める)が得意だとプロジェクトマネージャーに向いているといえます。
✔️⑤問題を先送りにしない
薄々まずいと気づいているけど忙しくて放置して炎上する。というのはよくあるパターンです。人間の記憶というのは優秀で「薄々まずい」ということはこれまでの記憶や経験にもとづいて脳が「まずい」と判断しているのだと思います。思ったとおり大抵は後で炎上します。
問題を先送りにせず対処し続けられる人はプロジェクトマネージャーに向いています。
✔️⑥上手くいくための戦略を考えることが得意
ざっくり「誰に、どんな価値を、どうやって提供するか」を実現するための方法をまとめることが戦略です。戦略は一般的に「リサーチ→目的の設定→戦略の策定→計画の取りまとめ→計画実行→評価」という流れで進めますが、ゴール設定・実現方法を考えることがプロジェクトマネージャーの腕の見せどころです。
✔️⑦優先順位をつけることが得意
プロジェクトチームを編成するとそれぞれの役割で専門的な人が集まります。各チームはそれぞれの領域に責任を持ちますので、プロジェクト全体を俯瞰して判断できる人は稀です。
プロジェクトマネージャーが正しい優先順位を示さないと、各チームは「とりあえず自分のチームのタスク」「今やるべきこと。ではなく、自分が得意なこと。」を進め出します。
目的や状況を把握して優先順位をつけて推進することが得意な人はプロジェクトマネージャーに向いています。
PMに向いていない人の特徴4つ

向いている人の特徴について解説した一方で、向いていない人の特徴もまとめます。
まず、前述した向いている人の特徴の対極にある場合は向いていない人の特徴です。例えば「コミュニケーションが苦手」「繊細で聞き流すことが苦手」などです。
上記以外で、向いていない人の特徴を挙げておきます。
✔️①計画的に取り組むことが苦手
「とりあえずやりながら進める」というスタイルしか持ち合わせていない人は、プロジェクトマネジメントを引き受けるのは難しいです。個人でやるならまだしも、チームを編成して仕事を進めるなら計画性は必須です。
✔️②何でも自分でやろうとする
特にプログラマー→システムエンジニア→プロジェクトリーダーと段階を経てプロジェクトマネージャーを担当している人には多い傾向があります。自分でやった方が早い。と現場作業を優先するとプロジェクト全体の推進が滞ります。
✔️③資料を作るのが苦手
何年も会議ばかり出てアウトプットせずいると、ドキュメンテーション力が低いまま歳を重ねてしまうことになります(実際Sierには結構います)。会話ベースのコミュニケーションだと関係者隅々まで正しく情報を伝えることが難しかったり、記録が残らないので総合的にみると非効率になります。
✔️④主観的に判断して進めてしまう
プロジェクトマネージャーは様々な立場の関係者のバランスを保ちながら仕事を進めます
ですので、データや根拠など「客観性」を大切にすることが非常に重要です。「自分はこう思う」など主観的に発言し仕事を進めるタイプの方は客観性を持つように意識しましょう。
PMはシステムエンジニア未経験者でもチャレンジできる|実際にいます!

システムエンジニア未経験からでも、プロジェクトマネージャーになることは可能です。ただし、IT業界に特化した仕事ではあるので、ITに関する知識やスキルを学習することが必要です。
実際のケースとして、過去に所属した部署でシステムエンジニア未経験で中途入社し、プロジェクトマネージャーとして活躍している人がいました。
✔️ケース1
アパレルブランドから大手Sierに転職
✔️ケース2
飲食店チェーン店の店長から大手Sierに転職
このお二人は、私と関わった時には中途入社して2〜3年経過したころでしたが全く違和感はありませんでした。別業界から中途入社されたと聞いておどろいたほどです。
PMは激務なのか

プロジェクトマネージャーの仕事は一般的に激務だと言われます。
PMのストレスの原因は何?
プロジェクトマネージャーがストレスを感じる原因は、さまざまな要因が考えられます。
例えば、プロジェクトの進捗状況や品質管理の問題、チームメンバーとのコミュニケーションの不足、時間管理の難しさ、予算やリソースの不足などが挙げられます。
また、顧客との交渉や報告書の作成など、ビジネスライクなタスクもストレスの原因となることがあります。
PMが激務になる理由
プロジェクト全体を俯瞰するため多くのタスクや責任を持ち、また関係者も多く仕事内容はハードです。
関係者が多い
プロジェクトの各チーム・メンバーを取りまとめるだけでなく、経営層や顧客からのプレッシャーを感じながら日々を過ごすことになりますので、この時点で精神的にハードです。
常に問題発生に追われる
全く問題が発生しないプロジェクトは存在せず、常に問題発生→事象の把握→原因分析→対処→対策にさらされます。難しい問題の場合は原因がシンプルでなく複雑なことが多く、コツコツと時系列で事象を整理したり、何故なぜを繰り返して根本原因を掘り起こしたりという作業は骨が折れます。
予算は限られている
プロジェクトマネージャーは、やるべきことをひたすら頑張れば良いというわけではなく予算や要員の働ける時間などを常に把握して調整を行いながら予算内でスケジュールを守らないといけません。
PMが激務にならないためには
プロジェクトマネージャーが激務にならないようにするためには、以下のような方法があります。
メンターに相談する
プロジェクトマネージャーの経験がある上司や先輩に相談しましょう。
プロジェクトマネジメントは、机上の勉強で知識はつきますが、実際にやってみないと肌感覚が身につかないような仕事です。特に経験が浅い若手プロジェクトマネージャーの方々は「分からないことが分からない」状況に陥ることがありますので、ぜひ自分より経験のあるメンターに相談できる状況を作りましょう。
タスクを整理する
私の経験上、プロジェクトマネジメントが上手くできていない場合、各チームはプロジェクト全体最適を考えて「今必要なこと」ではなく「自分が得意なこと」を進めようとします。
タスクを優先順位に従って整理し、重要なタスクから片付けることで炎上を予防して激務になることを避けることができます。
チームで推進する
プロジェクトチームでタスクを分担することで負担を分散します。プロジェクトマネージャーが忙殺されるとプロジェクトの舵取りがうまくいかず全体的に非効率になることがあります。
プロジェクトマネージャーはできる限りタスクを分担できるように整理したり、自分の補助となる要員を予め体制に組みこんでチーム編成しましょう。
休息をとる
忘れがちなのが休息を計画に含めておくことです。仕事に追われがちなプロジェクトマネージャーも適度な休息をとりストレスを軽減することが必要です。 各チームも含めて、休息をとることを予め計画に盛り込みましょう。
過去にいたプロジェクトを炎上させるダメPM

私がプロジェクトマネージャーを担当するようになる前に実際に関わったダメなプロジェクトマネージャーを紹介します。
目的や計画が不明確
プロジェクト計画書を類似プロジェクトから切り貼りしただけでまとめていて、プロジェクト関係者にも説明していないままプロジェクトがスタートしていることがありました。
チームメンバーがどのように取り組むべきか分からず当然のように大炎上しました。
意思決定が遅い(意思決定しない)
問題に対して対応方針を決めないプロジェクトマネージャーは厳しいです。
発生した問題に対して状況を整理し、対策案をいくつか用意して「この理由でこの対策でいかせてください」と渾身の準備を経て判断を仰いだのですが、YesともNoとも言わず時間だけが過ぎていき結果として問題が大きくなってしまいました。
全てを記録に残さない
決められたフォーマットがある報告以外、全ての会議を口頭で進めるプロジェクトマネージャーがいました。
打ち合わせの議題も用意せず、記録も残らないのでいつも「あれどうだったっけ?」の繰り返しです。しかもメールを送ったりチャットなどもしないのでコミュニケーションはもっぱら「顔を合わせて」やります。日中は打ち合わせばかりになり関係者は長時間労働の社畜となってしまいました…。
さいごに|PMとしての知識やスキルを身につけるためには『自分時間の確保』から
今回は、プロジェクトマネージャー初心者の方がプロジェクト推進に失敗しないために重要なポイントをまとめました。
プロジェクトが炎上すると私生活にも影響を及ぼすこともあります。
知識やスキルを身につけると、炎上させずにプロジェクト運営が行えるようになり私生活も安定します。
また、自信がつきキャリアにも好影響です。経験を積み資格を取得すると自分の市場価値が上がり年収アップも狙えます。
自己成長はいいことだらけなので積極的に行いたいところです。
まずは忙しい日常から「時間を確保する」ところから取りかかる必要があります。
時間の作り方は過去に記事をまとめているのでご興味あれば読んでみてくださいね。
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この記事が少しでもお役に立てるとうれしいです。最後まで読んでくださりありがとうございました。
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