ネット記事やSNSでは、「SIerは社内や顧客との調整ばかりでスキルが身につかない」という意見を目にすることがあります。
結論として、SIerではスキルが身につかないのではなく、その役割に応じて身につかないスキル・身につけられるスキルがあります。
この記事では、SIerで身につかないスキル・身につくスキルにはじまり、SIerで得られる経験を通じたキャリアプランの考え方を現役のSIerエンジニアが解説します。
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- SIerはスキルが身につかないというのは偏った意見で、実際にはSIerで「身につくスキル」「身につかないスキル」がある
- SIerで身につかないスキルは「プログラミングスキル」「新技術に関するスキル」「アジャイル開発スキル」「クリエイティブな問題解決スキル」
- SIerで身につけられるスキルは「プロジェクト管理スキル」「ドキュメンテーション力」「コミュニケーション能力」「ビジネススキル」
- 自分のキャリアビジョンに合わせて、そのスキルが必要か、そのスキルはどのような環境だと身につけられるか見極めることが重要
結論:SIerはスキルが身につかない。というのは偏った意見
ネット記事やSNSなどで「SIerではスキルが身につかない」という意見を目にすることがあります。
Google検索でも「SIer スキル 身につかない」という関連キーワードが出てきました。
当メディアの調査でも、20代がSIerの退職を検討する最大の理由は『スキルが身につかない』ことでした。
下記の記事では、口コミサイトの投稿を年代別に分析し、SIerを退職したい理由をまとめています。
興味のある方はご覧ください。
「SIerではスキルが身につかない」これは偏った意見です。
実際には、SIerで身につくスキルと身につかないスキルがあります。
SIer(システムインテグレーター)は、おもにシステム開発プロジェクトにおいて、顧客とのコミュニケーションを担当する一次請け企業を指します。
SIerは上流工程で「プロジェクト管理」「要件定義」「外部設計」を中心に担当する役割です。
実際のシステム開発に直接関わる下流工程は、二次請け以降の企業が担当するケースが一般的です。
そのため、SIerで重視されるのはコミュニケーションスキルやマネジメントスキルなど、上流工程で必要なスキルになります。
一方で、プログラミングやテストなど、下流工程で求められる実装スキルは、SIerで身につかないことが一般的です。
つまりSIerではスキルが身につかないというわけではなく、実際には上流工程で必要なスキルは高められますが、下流工程で必要な実装スキルは身につかないことがあるというのが実態です。
次の章では、SIerで身につかないスキルについて詳しく見ていきましょう。
SIerで身につかない4つのスキル
SIerで身につかないとされるスキルには、以下のようなものがあります。
- プログラミングスキル
- 新しい技術に関するスキル
- アジャイル開発スキル
- クリエイティブな問題解決スキル
それぞれ解説します。
プログラミングスキル
SIerでは、顧客の要件に基づいたシステムの提案やプロジェクト管理が中心となるため、実際のコーディング作業は少なくなります。
とくに大手企業では、開発作業は外部の専門企業に委託されることが一般的です。
その結果SIerで働いている人は、日々の業務を通じてプログラミングスキルを磨く機会が限られてしまいます。
新しい技術に関するスキル
SIer(システムインテグレーター)のプロジェクトでは、リスク管理が非常に重要です。
そのため、安定した技術の使用が優先され、最新技術の採用は慎重に行われる傾向にあります。
これは、新しい技術がもたらす不確実性や、それに伴うトラブルを避けるためです。
このような環境では、エンジニアが最新の技術トレンドやツールに触れる機会は自然と限られてしまいます。
とくに大規模なプロジェクトや長期にわたる契約では、導入から完成までの間に新しい技術が出現しても、すでに決定された技術スタックの変更は困難です。
結果として、SIerで働くエンジニアは、新しい技術トレンドやツールに対する知識が身につきにくいという状況になります。
アジャイル開発スキル
アジャイル開発は、システムに対して柔軟性と迅速なフィードバックを重視し、継続的な改善と顧客満足を目指す開発手法です。
この手法では、短い開発サイクル(スプリント)を通じて、頻繁に製品の進捗を評価し必要に応じて方向性を調整します。
しかしSIer(システムインテグレーター)のプロジェクトでは、予算や納期、要件が事前に厳密に決定されることが多く、その結果ウォーターフォール型の開発が主流となっています。
ウォーターフォール型では、プロジェクトの各工程が直列に進行し、ひとつの工程が完了してから次の工程に移るため、アジャイル開発のような柔軟な変更や迅速なフィードバックのループが形成されにくいのです。
このため、SIerで働くエンジニアは、アジャイル開発の経験を積む機会が限られており、スピード感を持って臨機応変にプロジェクトを推進するスキルが身につきにくいと言えます。
クリエイティブな問題解決スキル
SIer(システムインテグレーター)では、顧客のニーズに合わせたソリューションの提供が求められます。
これには、既存のフレームワークや手法を用いることが一般的です。
しかしこのアプローチは、既成の枠にとらわれる傾向があり、独自のクリエイティブな解決策を見出す機会を制限してしまいます。
顧客の問題に対してテンプレートや定型的な方法で対応することは、効率的で確実な解決策を提供する上で有効ですが、それによって新しいアイデアや革新的な解決策を生み出すチャンスが減少するという側面もあります。
とくに、DXへの取り組みが加速している現在では、非標準的な問題や複雑な課題に直面するケースも多いです。
このように、システム実装スキルが習得しづらく柔軟性も低いSIerは、「つまらない」という印象を持つ人もいるようです。
SIerで働くことはつまらないのか、以下の記事で実態を解説しているので興味がある人は読んでみてください。
なお、この章で挙げたSIerで身につかないスキルはあくまで一般論であることをご理解いただけるとありがたいです。実際にSIerでも開発専門部門では高いレベルで実装でき、深い専門知識を持つスペシャリストもたくさんいます。
一般的な大手SIerエンジニアでは、下流工程のスキルが身につきにくいということです。
SIerだからこそ身につく4つのスキル
SIerで働くことによって身につくスキルについて、詳しく解説します。
- プロジェクト管理スキル
- ドキュメンテーション力
- コミュニケーション能力
- ビジネススキル
ひとつずつ見ていきましょう。
プロジェクト管理スキル
SIerでの仕事は、多様な顧客とのプロジェクトに関わる機会が豊富にあります。
この経験を通じて、プロジェクトを円滑に進行させるための重要なスキルが身につきます。
スケジュール管理は、プロジェクトが期限内に完成するように各タスクの進行を計画し、追跡する能力です。
リソース調整は、必要な人材や資材を適切に配分し、効率的に使用することを指します。
また予算管理は、プロジェクトの費用を見積もり、コントロールすることでコストオーバーランを防ぎます。
これらのスキルは、SIerに限らずどの業界でも非常に重宝されるため大きな強みです。
プロジェクト管理スキルは、チームリーダーやマネージャーへの昇進、さらには他業界へのキャリアチェンジにおいても貴重な資産となるでしょう。
ドキュメンテーション力
SIerにおいては、提案資料・計画書・報告書・設計書など、多岐にわたるドキュメントの作成が不可欠です。
これらのドキュメントは、プロジェクトの目的・進行状況・成果物を明確に伝えるために重要な役割を果たします。
ドキュメンテーション力とは単に文書を作成する技術だけでなく、情報を整理し論理的に構成する能力、さらには読み手の理解を助けるための表現力も含まれます。
プロジェクトを推進する上で、これらのスキルがあってこそ内容が正確に固められ、関係者間での認識の齟齬を防ぐことが可能です。
とくにSIerでは技術的な内容を非技術者にも理解してもらう必要があるため、専門用語を適切に使い分ける、図表を用いて視覚的に情報を伝えるといったスキルが求められます。
これらのドキュメンテーション力は、プロジェクトの成功に直結するため、SIerで働くエンジニアにとって非常に価値のあるスキルと言えるでしょう。
また、これらのスキルは他の業界でも通用するため、キャリアを通じて磨き続けることが重要です。
コミュニケーション能力
SIerでの仕事は、顧客のニーズを正確に理解し、それを具体的なシステム要件に変換することが求められます。
このプロセスには、明確なコミュニケーションが不可欠です。
顧客との会話から重要な情報を引き出しそれを技術チームに伝えるためには、ヒアリング能力・説明能力・そして説得力が求められます。
また、プロジェクト内でのチームメンバーとのコミュニケーションでは、相互理解と協調性を促進することが重要です。
SIerでの業務は、これらのコミュニケーションスキルを実践し、磨くための絶好の機会が多くあります。
顧客との効率的なコミュニケーションは、プロジェクトの成功に直結し、またチーム内での円滑な作業進行にも寄与します。
これらのスキルはSIerに限らず、あらゆるビジネスシーンで非常に価値が高いと言えるでしょう。
ビジネススキル
SIerは、技術的な専門知識とビジネスの要求を結びつける重要な役割を果たします。
この役割を効果的に果たすためには、以下のようなビジネススキルが不可欠です。
ビジネスプロセスの理解
SIerは顧客のビジネスプロセスを深く理解する必要があります。
これにより、顧客の要求に合ったシステムを設計し、ビジネスの効率化や価値創出を支援することができます。
ソリューション提案能力
顧客に対して、そのニーズに応じた最適なソリューションを提案する能力も求められます。
これは、顧客の問題点を特定し、それを解決するための具体的な方法を考案することを含みます。
ビジネス価値の創出
提案されたソリューションが実際にビジネス価値を生み出すことができるかを評価し、それを顧客に伝えることができる能力も重要です。
これらは将来的にビジネスリーダーやコンサルタントへのキャリアパスを目指す際に、非常に役立つスキルセットです。
SIerで培ったビジネススキルは、多様な業界や職種でのキャリア展開においても、大きなアドバンテージとなるでしょう。
そのため、これらの能力を意識的に伸ばし、実践することがキャリアアップに役立ちます。
ここで挙げたスキルはSIerでの経験を通じて自然と習得できるものであり、他の業界や職種に移ったとしても、その価値を発揮することができます。
SIerでのキャリアを通じて、これらのスキルを意識的に磨き、自身の市場価値を高めていくことが重要です。
SIerでは開発スキルが身につかない。は本当に問題なのか見極めが重要
SIerで働くことにより、開発スキルよりも上流工程のスキルが磨かれることが多いです。
開発スキルが直接的に身につかない環境であってもこれらの上流工程のスキルは、将来的にコンサルティングファームや事業会社、スタートアップのIT部門でのポジションにおいて非常に価値があります。
また、上流工程のスキルを活かしてフリーランスのITコンサルタントとして独立する道もあります。
このようなキャリアパスを考える際には、SIerでの経験が大きなアセットとなるでしょう。
重要なのは、何のために、どのようなスキルが必要かを自身のキャリアプランに照らし合わせて考えることです。
開発スキルが直接的に身につかないことがあなたのキャリア目標にとって本当に問題なのか、それともSIerで身につけることができる他のスキルがあなたの将来にとってより価値があるのかを見極めることが重要です。
自分のキャリアビジョンに合わせて、どのスキルを磨くか、または新たに学ぶかを正しく見極めましょう。
キャリアプランの必要スキルがSIerでは身につけられない場合の対処
キャリアプランを策定する際には、自分が目指す将来像に必要なスキルセットを明確にすることが重要です。
もし、そのスキルが現在のSIerの職場で身につけられないと感じた場合、「必要スキルを習得できる環境に転職する」「独学や副業で自己研鑽する」という対処法が考えられます。
必要スキルを習得できる環境に転職する
キャリアプランに必要なスキルを身につけることができる環境を求めて転職することを検討します。
自身が希望する職種や業界に強い転職エージェントに相談してみることも有効です。
すぐには転職に踏み切らなくても、情報収集を続けることで自分に最適な環境を見つけられる可能性が高まります。
独学や副業で自己研鑽する
SIerでの仕事を続けながら、オンラインコースや資格取得、副業でのプロジェクト参加などを通じて、必要なスキルを独学で身につける方法もあります。
本業と並行するため、時間や体力的にハードなことに注意が必要です。
これらの方法は、自分のキャリアプランに合わせて選択し、実行に移すことが重要になります。
自分の目指すキャリアに向けて積極的にスキルを磨き、チャンスを掴むための努力を続けましょう。
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まとめ:SIerでは身につかないスキルを理解して納得できるキャリアを歩もう
この記事を通して以下のことがわかりました。
- SIerはスキルが身につかないというのは偏った意見で、実際にはSIerで「身につくスキル」「身につかないスキル」がある
- SIerで身につかないスキルは「プログラミングスキル」「新技術に関するスキル」「アジャイル開発スキル」「クリエイティブな問題解決スキル」
- SIerで身につけられるスキルは「プロジェクト管理スキル」「ドキュメンテーション力」「コミュニケーション能力」「ビジネススキル」
- 自分のキャリアビジョンに合わせて、そのスキルが必要か、そのスキルはどのような環境だと身につけられるか見極めることが重要
SIerでのキャリアは多くの学びと成長機会を与えてくれますが、すべてのスキルが身につくわけではありません。
とくに直接的な開発作業や最新技術の習得などは、SIerの業務範囲外であることが多いです。
しかし、これはSIerでのキャリアに価値がないという意味ではありません。
SIerで身につくスキルは、プロジェクト管理やビジネス理解など、ほかの多くの職種や業界で非常に重宝されるものです。
これらのスキルは将来的にリーダーシップをとるポジションやコンサルタント、事業開発など幅広いキャリアパスにおいて大きな強みとなります。
もし、あなたのキャリアプランでSIerでは身につけられないスキルが必要な場合、自己学習や資格取得、副業を通じてそれらのスキルを磨くことができます。
また、必要なスキルを身につけるために転職を検討するのも一つの選択肢です。
大切なのは、自分のキャリア目標を明確にし、そのために必要なスキルを理解することです。
そして、現在の職場で身につけられるスキルと、自分で補うべきスキルを見極め、バランスよくスキルセットを構築することが重要になります。
SIerでの経験を活かし納得できるキャリアを歩んでいくために、柔軟な学習姿勢と積極的なキャリアデザインを心がけましょう。