メーカー系SIerはやめとけ?実態を現役メーカー系SIerエンジニアが解説

メーカー系SIerは辞めとけ?

Googleでメーカー系SIerの評判を調べると「やめとけ」というネガティブな意見を目にすることがあります。

実際にメーカー系SIerで働いている筆者から見ると、それは言い過ぎです。
メーカー系SIerもほかの職種と同じく、メリット・デメリットがあります。

この記事では、メーカー系SIerはやめとけ言われる理由にはじまり、向いている人の特徴やメーカー系SIer選びで失敗しないためのポイントなどをまとめて解説します。

この記事でわかること
  • メーカー系SIerには安定性と手厚い待遇といったメリットがある一方で、実務スキルの習得が難しい、年功序列の文化が残りがちなどのデメリットもある
  • メーカー系SIerに向いている人の特徴は、「長期的なキャリアを望む」「大規模プロジェクトに興味がある」「安定志向が強い」など
  • ホワイト企業と呼ばれる良好な労働環境のメーカー系SIerも存在する。転職エージェントや口コミサイトを活用して、自分に合った企業を選ぶことが重要
目次

結論|メーカー系SIerは「やめとけ」は言い過ぎ。安定志向な人にはおすすめ

メーカー系SIerとは、自社や親会社が製造業などのメーカーであるSIerのことです。

メーカー系SIerは一般的に大手企業が母体であり、安定した経営基盤を持っていることが多いため、安定志向な人におすすめです。
比較的高収入で福利厚生が充実しており、さらに長期的なキャリア形成を支援する体制が整っています。

一方で、若くても実力で評価される環境で働きたい人や、システム開発の実装スキルを身につけたい人は要注意です。
メーカー系SIerでは、プロジェクトの規模が大きく、役割が細分化されているため、個々の技術力よりもチームでの協力が重視される傾向にあります。
そのため、実装スキルを磨く機会が限られている場合もありますし、実力主義の環境を求める人には物足りないかもしれません。

このように、メーカー系SIerは一概に「やめとけ」とはいえない多面性を持っています。
自身のキャリアプランや働き方に対する価値観をしっかりと見極めた上で、適切な選択をすることが重要です。
安定を求めるか、技術力の向上を求めるか、それぞれの目標に応じてメーカー系SIerが適しているかどうかを考えましょう。

そもそもメーカー系SIerとは?ほかのSIerとの違い

SIerの分類は大きく分けて4つあります。
それぞれの特徴とどのような人に向いているかは、以下のとおりです。

種類特徴向いている人
メーカー系SIerメーカーが親会社。一般的に大手企業が母体であり、安定した経営基盤を持っていることが多い。安定志向な人
大手企業でキャリアを積みたい人
ユーザー系SIer特定の業界に特化したシステムを提供。顧客のビジネスを深く理解し、業界特有のニーズに応える。業界知識を深めたい、特定の分野で専門性を高めたい人
独立系SIer特定のメーカーやユーザー企業に依存しない。多様な技術とサービスを提供。技術の多様性を求める、幅広い経験を積みたい人
外資系SIer国際的なビジネス展開を行う外国資本の企業。グローバルな視点でのプロジェクトが多い。国際的なキャリアを目指す、グローバルな環境で働きたい人

メーカー系SIerは、自社や親会社が製造業などのメーカーであるSIerのことです。
安定した経営基盤があり長期的なキャリア形成が可能で、安定志向の人に向いています。

ユーザー系SIerは、特定の業界に特化したシステムを提供する企業です。
顧客のビジネスを深く理解し、業界特有のニーズに応えるサービスを提供します。
業界知識を深めたい、特定の分野で専門性を高めたい人に適しています。

独立系SIerは、特定のメーカーやユーザー企業に依存しない独立した企業です。
自社ソリューションに限らず幅広い技術とサービスを提供し、多様な業界のクライアントに対応します。
技術の多様性を求める、幅広い経験を積みたい人に向いています。

外資系SIerは、国際的なビジネス展開を行う外国資本の企業です。
グローバルな視点でのプロジェクトが多く、英語などの語学力が求められることがあります。
国際的なキャリアを目指す、グローバルな環境で働きたい人におすすめです。

それぞれ異なる特徴と強みを持っており、自分のキャリアプランや働き方の希望に合わせて選ぶことが大切です。

次では、メーカー系SIerはやめとけと言われる理由を見ていきましょう。

メーカー系SIerはやめとけと言われる5つの理由

メーカー系SIerは、安定性や手厚い待遇など魅力的な面もありますが、以下のような理由から「やめとけ」と言われることもあります。

  • システム開発の実務スキルを身につけられないからやめとけ
  • 出世や昇給のペースが遅いからやめとけ
  • 客先常駐がつらいからやめとけ
  • 転勤や海外出張の可能性があるからやめとけ
  • 伝統的な日本の企業文化が苦手ならやめとけ

それぞれ解説します。

システム開発の実務スキルを身につけられないからやめとけ

メーカー系SIerは、システム開発の実務スキルを身につける機会が限られているという点で、一部のエンジニアにとってはデメリットとなることがあります。

メーカー系SIerで働く場合、メインの業務は上流工程で、システム開発の実務を行う下流工程は二次請け以降に委託することが一般的です。

SIerの多重下請け構造

これにより、要件定義や設計などの初期段階に関わることは多いですが、実際のコーディングやシステムの実装に関する経験が少なくなる傾向があります。

また大手企業のプロジェクトでは、作業が細分化されており、特定の狭い範囲の作業に限定されることが多いです。
これは、プロジェクトの全体像をつかみ多様な技術スキルを磨く機会を制限する可能性があります。

これらの点を踏まえると、実装スキルや最新技術の習得を重視するエンジニアにとって、メーカー系SIerは必ずしも最適な選択肢ではないかもしれません。
キャリアの目標と現実の職務内容を照らし合わせ、適切な判断をすることが重要です。

以下の記事では、SIerで身につけやすいスキルと身につけにくいスキルをくわしく解説しているので、興味がある人は読んでみてください。

出世や昇給のペースが遅いからやめとけ

メーカー系SIerでのキャリアは安定しているとはいえ、年功序列が残っていることも多く、出世や昇給のペースが遅いと感じる人も少なくありません。

大規模な組織では階層が多く、それぞれの階層での競争が激しいため、昇進の機会が限られていることもあります。
また、内部での競争が少ないため、積極的な成果を出してもそれが昇給や昇進に直結しにくい環境があると言われています。

これらの理由から、とくに若手のうちから急速なキャリアアップを望む人にとっては、メーカー系SIerは不満に思う人もいるでしょう。
一方で、安定を求める人にとっては、これらの点がメリットと感じられることもあります。

客先常駐がつらいからやめとけ

SIerでの客先常駐は、一部の人にとっては厳しい環境となることがあります。
以下は、客先常駐がつらいと感じる理由をまとめたものです。

メーカー系SIerは、親会社からの案件を受ける形態が多く、実質的に下請けの立場になります。
このため、客先に常駐して作業を行うことが一般的ですが、これにはいくつかのデメリットが存在します。

まず、客先での作業は自社のオフィスでの作業とは異なり、客先の文化や環境への順応が必要です。

これにより、自社の福利厚生や勤務体系を享受できない場合があります。
また、プロジェクトが終了すると職場が変わる可能性があり、これが継続的なチームワークの構築やキャリア形成に影響を与えることがあります。

さらに客先常駐の場合、休暇の取得が自社と常駐先両方の承認が必要になることがあり、これが休暇取得のハードルを高めてしまうのです。
また、退社時間が遅くなる傾向にあるほか、仕事量が多いと感じることもあります。

転勤や海外出張の可能性があるからやめとけ

メーカー系SIerは大手企業が多く、国内外に拠点を持っていることが一般的です。
そのため、転勤や海外出張が求められる可能性があります。

転勤となれば、家族との時間が確保しにくくなるなど、家庭生活へ及ぼす影響は大きいです。
また、海外勤務の場合は、生活習慣の違いや言語の壁など、環境の変化への対応が求められます。

つまり、メーカー系SIerではキャリアを考える上で、転勤や海外赴任の可能性を無視できません。
家庭生活を大切にしたい人や、急激な環境の変化に不安を感じる人は、このようなリスクを勘案する必要があるでしょう。

伝統的な日本の企業文化が苦手ならやめとけ

メーカー系SIerは、古くからの日本の企業文化を色濃く残している企業も多いです。
以下のような特徴があります。

  • 年功序列制度により、昇進や昇給が勤続年数に基づくことが多く、若手社員が実力を発揮しても報われにくい
  • 上下関係の厳格なため、社内のコミュニケーションが縦の関係に重きを置き、意見を言いにくい雰囲気がある
  • 変化への抵抗感があり、新しい技術やアイデアの導入に対して慎重で、既存のやり方を好む
  • 長時間労働がベースで残業が当たり前とされる風潮が根強く、ワークライフバランスを重視する人には合わない可能性がある
  • リスク回避の志向が強く、失敗を恐れるあまり新しい試みを控えることで、業務効率化や革新が進まない

これらの特徴が苦手な人にとっては、メーカー系SIerでの働き方がストレスに感じられるかもしれません。
自分がどのような環境で活躍できるか、どのような働き方を望むかを考慮し、自分に合っているかを検討することが大切です。

ここまでは、やめとけと言われる理由を見てきましたが、次の章ではメーカー系SIerのメリットを見ていきましょう。

メーカー系SIerのメリット3選

メーカー系SIerにはデメリットもありますが、大手企業ならではの魅力的な面もあります。
おもなメリットは以下の3点です。

  • 安定した雇用と収入が魅力
  • 大手企業としてのブランド力と信頼性
  • 労働環境や福利厚生が充実している場合が多い

それぞれ解説します。

安定した雇用と収入が魅力

メーカー企業は基盤が安定していることが多く、雇用の安定性が高いです。
また、大手企業として収入水準も手厚い傾向にあります。
収入が安定していることは大きなメリットといえるでしょう。

大手企業としてのブランド力と信頼性

メーカー系SIerは大手企業のグループに属していることが一般的です。
そのため社会的な知名度とブランド力があり、取引先からの信頼も厚いです。
就職後のキャリアにもプラスになる面があります。

労働環境や福利厚生が充実している場合が多い

大手メーカーは労働環境や福利厚生面でも手厚い傾向にあります。
住宅手当や健康管理体制、各種アシスタント制度など、ワークライフバランスを支援する制度が整備されていることが多いです。

このように、安定性の高さと大手企業ならではの手厚い待遇が、メーカー系SIerの大きな魅力といえます。
収入面と生活面での安心感は非常に大きなメリットといえるでしょう。

次では、メーカー系SIerに向いている人の特徴について解説します。

メーカー系SIerに向いている人の3つの特徴

メーカー系SIerに向いている人の特徴は、以下の3つです。

  • 長期的なキャリアを望む人
  • 大規模プロジェクトに興味がある人
  • 安定志向が強い人

それぞれ解説します。

長期的なキャリアを望む人

メーカー系企業は基盤が安定しているため、長期的な視点でキャリアを描けます。
同じ製品に長く関わりながら専門性を高めていくスタイルを好む人に向いているでしょう。

大規模プロジェクトに興味がある人

メーカー系SIerが担当する案件は大規模なものが多いです。
大規模システムの開発プロセスに携われることに魅力を感じ、大企業でキャリアを築いていきたいと考える人に向いています。

安定志向が強い人

メーカー系企業は雇用が安定しており、手厚い待遇とワークライフバランスの取れた労働環境が用意されていることが一般的です。
安定志向の強い人にとって魅力的な職場といえます。

一方で、スピード感のある成長を望む人や、より自由で革新的なチャレンジを重視する人は、メーカー系SIerに適さない可能性があります。
キャリアアップの遅れや、保守的な企業風土に嫌気がさすかもしれません。

つまり、メーカー系SIerは安定重視で大規模開発に携わりたい人に向いていますが、成長性や革新性を求める人は別の選択肢を検討するべきでしょう。
自分に合った働き方ができる環境を選ぶことが大切です。

SIerホワイト企業ランキングに入るメーカー系SIerはどこ?

メーカー系SIerは、安定したキャリアを求める人に適しているため、働きやすい環境が整備されたホワイト企業を選ぶことが重要です。

以下の記事で、SIerの残業が少ないホワイト企業ランキングTOP25をまとめて解説しているので、興味がある人は読んでみてください。

上記のランキングでは、メーカー系SIerは「日本電気(NEC)」「富士通」がランクインしています。

日本電気(NEC)

出典:日本電気 株式会社

NECはワークライフバランスの実現に注力しており、長時間残業を避ける企業風土があります。

富士通

出典:富士通株式会社

富士通も独自の働き方改革を推進しており、残業時間や有休消化率は、比較的ホワイトです。

これらの企業は、安定した雇用・高い平均年収・比較的良好な労働環境を提供していると評価されています。

ただし残業時間や評判は個々の部署やプロジェクトによって異なる場合があるため、転職や就職を検討する際には、具体的な職場の状況を確認することが重要です。

メーカー系SIer選びで失敗しないための2つのポイント

メーカー系SIerへの就職や転職に失敗しないため、最低限おさえておきたいポイントは以下の2つです。

  • 就活エージェント・転職エージェントを活用する
  • 口コミサイトで企業の実態を知る

就活エージェント・転職エージェントを活用する

IT業界に特化した就職や転職エージェントを利用することで、個人のスキルセットやキャリア目標に合致した求人情報を得られます。
これらのエージェントは、履歴書のブラッシュアップから面接の準備まで、転職活動に関する幅広くサポートしてくれます。

就活エージェントだと「レバテックルーキー」「エンジニア就活」などが知名度が高いです。
転職エージェントは、「マイナビITエージェント」や「レバテックキャリア」はIT経験者向けのサービスとして知られています。

口コミサイトで企業の実態を知る

企業の内部情報を知るためには、口コミサイトの活用が有効です。
口コミサイトでは、現在または過去にその企業で働いていた人々のレビューや体験談を参照でき、企業文化・労働環境・福利厚生・ワークライフバランスなどについての実際の情報を収集できます。
enライトハウス」「転職会議」「openwork」などが、実際の社員の声を集めた代表的なサイトです。
複数のサイトを参照し、情報を比較することで、企業の実態をより正確に把握できます。

効率的に情報収集を行うことが、転職を成功に導く鍵となります。
自分に合った企業を見つけ、キャリアアップを目指しましょう。

メーカー系SIerはやめとけ|に関するよくある質問

「メーカー系SIerはやめとけ」という意見に関する質問を紹介します。

Q1.SIerはつまらないという意見を目にしました。実態はどうなの?

SIerの仕事が一部の人に「つまらない」と感じられることがありますが、これはおもにプロジェクト管理が中心となり、技術的な作業に専念できる時間が少ないためです。

また、顧客の要望に応えるサービス業の性質上、時には不合理な要求に応じなければならない状況が生じることもあります。

しかし、これらは一面的な見方であり、SIerでの仕事が全員にとってつまらないわけではありません。
自分に合った働き方を見つけ、自律的なキャリア形成を行うことが重要です。

以下の記事で、くわしく解説しているので興味がある方は読んでみてください。

Q2.SIerには将来性がありますか?

一部ではSIerの将来性に悲観的な見方も存在しますが、SIer業界が衰退の方向に向かっているわけではありません。

以下の記事で、その実態をくわしく解説しているので読んでみてください。

Q3.客先常駐は避けたいのですが、無理でしょうか?

客先常駐を避けたいという希望は、まったく無理なことではありません。

メーカー系SIerの中には自社ソリューション開発に注力している企業もあり、客先常駐なし場合もあります。
実際に執筆時点の筆者がそのスタイルです。

SIerでの客先常駐なしの働きかたは、以下の記事で解説しているので興味がある方は読んでみてください。

まとめ|メーカー系SIerはやめとけ。の背景を理解してキャリアプランを検討しよう

この記事をとおして、以下のことがわかりました。

  • メーカー系SIerには安定性と手厚い待遇といったメリットがある一方で、実務スキルの習得が難しい、年功序列の文化が残りがちなどのデメリットもある
  • メーカー系SIerに向いている人の特徴は、「長期的なキャリアを望む」「大規模プロジェクトに興味がある」「安定志向が強い」など
  • ホワイト企業と呼ばれる良好な労働環境のメーカー系SIerも存在する。転職エージェントや口コミサイトを活用して、自分に合った企業を選ぶことが重要

キャリアプランを検討する際には、自分の価値観やキャリアの目標を明確にし、それに合った企業を選ぶことが重要です。

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この記事を書いた人

国内大手SIerに新卒入社し、現在もプロジェクトマネージャーとして働いています。
自社製品開発・受託開発、企画〜開発〜運用保守まで幅広く経験してきました。
ワーママとして日々忙しく働きながらも、なんとか充実した生活を送れています。
実際に働いているからこそわかるリアルな情報や、私自身が転職活動を通じて得たIT業界の知識をわかりやすく発信していきます。

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