「SIerは終わってる」
このようなネガティブな意見を目にして、SIerで働く実態を知りたいと思っていませんか。
この記事では、現役のSIerエンジニアがSIerは終わってると言われる理由にはじまり、終わっているSIerを見分けるポイントやSIer以外の選択肢をまとめて解説します。
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- SIerは終わっていると言われる理由は「多重下請け構造」「システム開発の丸投げ」「昔ながらの古い体質」など
- SIerの存在意義は「複雑なシステム開発の実現」「ITコンサルティング」「DXの推進」などの要素が挙げられる
- 終わっているSIerを見分けるポイントは「多重下請け構造の下位に位置する」「法令やエンジニアの権利を守らない組織体質」など
SIerは終わってると言われる5つの理由
SIerは「終わってる」と言われるおもな理由は、以下のとおりです。
- 多重下請け構造
- システム開発の丸投げ
- 技術を軽視しがち
- 昔ながらの古い体質
- 人月商売の限界
それぞれ解説します。
1.多重下請け構造
日本のSIer業界は、多重下請け構造が根強く残っており、これが業界全体の効率性やイノベーションの妨げになっていると言われています。
多重下請け構造とは、元請け企業がプロジェクトを受注した後、その作業の一部またはすべてを他の企業に再委託することを繰り返すビジネスモデルです。
この結果、プロジェクトは複数の企業を経由して実施され、以下のような問題が発生します。
- 責任の所在が不明確になる
- 利益の中抜きが発生する
- 品質の低下
- エンジニアの待遇問題
責任の所在が不明確になる
プロジェクトが多数の企業に分散されると、各企業間でのコミュニケーションが複雑化し、問題が発生した際の責任の所在が曖昧になります。これにより、問題解決の遅延や品質管理の困難さが増します。
利益の中抜きが発生する
多重下請け構造は、下請け企業に仕事が渡る度に中間マージンが発生する仕組みです。
これにより、実際の作業を行う下請け企業の利益が圧縮され、結果としてエンジニアの報酬やプロジェクトの品質に影響を及ぼします。
品質の低下
利益が圧縮されることで、下請け企業はコスト削減を迫られ、それがエンジニアの待遇低下や作業品質の低下につながります。
最終的には、製品やサービスそのものの品質にも悪影響を及ぼす可能性も十分に考えられるでしょう。
エンジニアの待遇問題
多重下請け構造の中で働くエンジニアは、適切な報酬やキャリアアップの機会を得にくくなります。
とくに若手エンジニアにとっては、スキルアップやモチベーションの維持に影響を与える問題です。
これらの問題は、SIer業界における構造的な課題として長年指摘されており、業界全体のイメージ低下や人材流出を招いています。
一方で、これらの問題に対する認識と改善の動きも見られ、より健全なビジネスモデルへの転換が求められています。
2.システム開発の丸投げ
システム開発の丸投げとは、元請け企業がプロジェクトの要件定義や設計を行い、その後の開発作業をまとめて下請け企業に委託することです。
SIerがシステム開発を丸投げすると、以下のような問題を引き起こします。
- 元請けSIerの責任感の欠如
- エンジニアの技術力低下
- コミュニケーションの障壁
- イノベーションの阻害
SIerで働くとスキルが身につかないと不安を感じる人もいます。以下の記事では、SIerで身につかないスキル・身につくスキルを解説しているので、興味がある人は読んでみてください。
責任感の欠如
元請け企業が開発作業を行わないため、開発に携わるエンジニアは製品に対する責任感を持ちにくくなります。
結果的に、製品の品質に直接的な影響を与える可能性があります。
エンジニアの技術力低下
システム開発を受託する企業のエンジニアは、単純な開発作業に留まることが多く、新しい技術やスキルを学ぶ機会が限定的です。
これにより、技術力の向上が困難になり、エンジニア自身のキャリアの成長にも影響を及ぼします。
コミュニケーションの障壁
要件定義や設計段階でのコミュニケーションが不足していると、システム開発を受託する企業はプロジェクトの全体像を把握できません。
全体像を把握できないまま作業を進めていると、開発プロセス中の誤解やミスを招く原因となります。
イノベーションの阻害
開発作業が分断されることで、エンジニアがイノベーションを起こすための環境が整いにくくなります。
結果として、業界全体の競争力の低下が懸念されるでしょう。
3.技術を軽視しがち
SIer業界では、プロジェクトの上流工程、つまり要件定義や設計を重視する傾向があります。
これ自体は重要な工程ですが、問題はその後の実際の開発や技術面が軽視されることにあります。
SIerで働く人の一部の人は、下流工程を受託する企業は替えがきくという考え方を持っていることも事実です。
このような姿勢は、「パートナー企業の信頼喪失」「競争力の低下」のような負の連鎖を生み出す可能性があります。
パートナー企業の信頼喪失
技術面を軽視することで、パートナー企業との信頼関係が損なわれます。
パートナー企業は単なる作業の実行者と見なされると、そのSIerとの長期的な関係構築や共同での価値創出が停滞しがちになります。
競争力の低下
国内外の市場では技術革新が進む中、技術を軽視する姿勢は企業の競争力を大きく損ないます。
とくにグローバル市場においては、技術力が直接的な競争優位につながるためこの問題は深刻です。
4.昔ながらの古い体質
日本のSIerは、年功序列や上下関係が強いなど、古い体質が残っているところも多く、これが柔軟な働き方や新しい技術の導入を妨げているとされています。
日本のSIer業界が古い体質であることを示すのは、以下の特徴です。
- 年功序列
- 上下関係の意識が過剰
- 柔軟な働き方の妨げ
- 新しい技術の導入の遅れ
年功序列
昇進や報酬が年齢や勤続年数に基づいて決定されることが多く、実力や成果よりも古い慣習が優先されます。
これは、若手社員のモチベーション低下や能力に見合った評価がされないことにつながります。
上下関係の意識が過剰
上司と部下の関係が厳格に保たれ、意見を言いにくい雰囲気があることは否めません。
このような風通しが良くない組織風土により新しいアイデアや改善提案が出にくくなり、組織全体の革新が阻害されます。
柔軟な働き方の妨げ
古い体質は、リモートワークやフレックスタイムなどの柔軟な働き方を導入する際の障壁となります。
柔軟な働き方のための制度自体は整備されていても、チームの雰囲気や顧客へ同調しなければならない暗黙的な圧力により、ワークライフバランスをとることが難しいこともめずらしくありません。
新しい技術の導入の遅れ
保守的な企業文化は、新しい技術や手法の導入を遅らせ、結果として業界全体の競争力を低下させます。
SIerは顧客からシステム開発や運用を受託するビジネスモデルのため、想定外のリスクを含む可能性がある新しい技術や手法を取り入れることを嫌厭しがちです。
これらの問題は、SIer業界における根深い課題として存在し、業界のイメージや魅力を損なう要因となっています。
5.人月商売の限界
少子高齢化により、労働力人口が減少している中で、人月商売に依存するビジネスモデルは持続可能性に疑問が投げかけられています。
人月商売とは、プロジェクトの規模や価値をエンジニアの労働時間(人月)で計算し、それに基づいて報酬を得るビジネスモデルです。
しかし、以下のような理由で、このモデルの持続可能性には疑問が投げかけられています。
少子高齢化による労働力人口の減少
日本は世界でも顕著な少子高齢化を経験しており、労働力人口が減少しています。
人月商売に依存する企業は、必要な人材を確保することが困難になります。
価値創出の問題
人月商売は、労働時間に基づくため、生産性の向上が報酬に直接反映されにくいです。
これは、効率的な作業や技術革新を促進するインセンティブが不足していることを意味します。
本来プロジェクトの価値は時間ではなく、提供されるサービスや製品の質によって決まるべきです。
人月商売は、価値創出よりも時間を重視するため、最終的な成果の質を損なう可能性があります。
これらの理由は、SIer業界におけるさまざまな問題点を浮き彫りにしています。
しかし、これらの問題に対処し、改善を図ることで、SIer業界の未来は決して暗くはないとも言えます。
次の章では、SIerの存在意義を見ていきましょう。
SIerは終わってるのか?SIerの存在意義
SIerは、システム開発の専門家として、企業のITニーズに応える重要な役割を担っています。
しかし、時代の変化と共にSIerのビジネスモデルや業務内容に対する批判もあり、「SIerは終わってる」という声も聞かれます。
では、SIerの存在意義は何なのでしょうか。
結論として、SIerは以下のような価値を提供することで、その存在意義を示しています。
- 複雑なシステム開発の実現
- ITコンサルティング
- システムの統合と最適化
- 保守とサポート
- DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進
複雑なシステム開発の実現
大規模かつ複雑なシステム開発は、専門的な知識と経験が必要です。
SIerは、これらのプロジェクトを成功に導くための技術力とプロジェクト管理能力を有しています。
ITコンサルティング
SIerは、顧客のビジネス戦略に合わせたITソリューションを提案し、ビジネスの成長を支援する役割です。
多くの顧客のシステムを支えるからこそ得られる知見を、業種や業界をまたいで展開することで、業務プロセスの最適化や最終的なビジネス価値へ貢献できます。
システムの統合と最適化
異なるシステムやアプリケーションを統合し、効率的な運用を可能にすることもSIerの重要な役割です。
業務システムの全体像を把握し最適化できるからこそ、企業はIT投資の最大化を図ることができます。
保守とサポート
昨今は、システムが止まってしまうと業務が滞ってしまい深刻なビジネス影響を及ぼすこともめずらしくありません。
SIerはシステム導入のみではなく、システム本稼働後もSIerは継続的な保守とサポートを提供し、システムの安定稼働に貢献できます。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進
近年、企業のデジタル化への取り組みが加速しており、IPAによると全社・部門・部署のいずれかでDXへ取り組んでいる企業の割合は2021年では約56%で合ったところ、2022年は約69%へ増加傾向です。
SIerは、DXを推進するための戦略立案から実行までを支援し、企業の競争力強化に貢献します。
これらの点から、SIerは「終わっている」と一概には言えません。
たしかに、業界内での問題点や改善すべき点は存在しますが、SIerは依然としてIT産業における中核的な役割を果たしており、多くの企業にとって不可欠な存在です。
SIer業界が直面している課題に対処し、進化を続けることで、その価値は今後も維持されるでしょう。
終わってるSIerを見分ける4つのポイント
国内には数千社ものSIerが存在し、その中には良い企業も悪い企業も混在しています。
では、終わってると言われるような企業を見分けるポイントは何でしょうか。
以下の4つのポイントを説明します。
- 多重下請け構造の下位に位置する
- 法令やエンジニアの権利を守らない組織体質
- 営業が開発に疎い
- 顧客が満足するほどのソリューションを提供できない
ひとつずつ解説します。
多重下請け構造の下位に位置する
多重下請け構造の下位に位置するSIer企業は、報酬や労働環境が不利な状況にあることが多く、これが「終わっている」と言われる一因です。
元請けから中間マージンを抜かれるため、給与が低く抑えられ、労働環境も悪化する傾向にあります。
- 報酬の問題:元請け企業からの中間マージンが抜かれるため、下位の企業では給与が低く設定される傾向がある
- 労働環境の悪化:報酬が低いことに加えて、労働条件も厳しくなることが多いです
SIer企業を選ぶ際には、このような多重下請け構造の影響を受けていないかを慎重に評価することが重要です。
法令やエンジニアの権利を守らない組織体質
法令遵守やエンジニアの権利を尊重しない企業文化は、社員のモチベーション低下や優秀な人材の流出を引き起こします。
長時間労働や不適切な契約形態など、労働環境の問題は「終わっている」とされる企業の特徴です。
法令遵守やエンジニアの権利を尊重しない組織体質は、以下のような問題を引き起こすことがあります。
- 社員のモチベーション低下:法令を遵守しない企業文化は、社員が安心して働ける環境を提供できず、モチベーションの低下を招く
- 優秀な人材の流出:労働環境が悪いと、とくに能力の高い社員が他のより良い条件を提供する企業へ移ることがある
- 長時間労働:法令を無視した長時間労働は、社員の健康を害し、生産性の低下をもたらす可能性がある
- 不適切な契約形態:不適切な契約は、エンジニアが成果に集中できないことを意味し、結果として企業の評判を損なうことになる
このような労働環境の実態は、実際に働いている人から評判を聞くことで確認可能です。
身の回りに実際に働いている人がいなければ、口コミサイト(転職会議、openwork、indeed、ライトハウス)の評判がある程度参考になるでしょう。
営業が開発に疎い
営業担当者が技術的な知識に乏しい場合、クライアントの要求と実際の開発能力との間にギャップが生じ、プロジェクトの失敗につながるリスクが高まります。
営業担当者が技術的な知識に乏しいと、以下のような問題が生じる可能性があります。
- 顧客要求とのギャップ:営業が技術的要素を理解せず受注すると、プロジェクトの目標と実際の成果との間にズレが生じるリスクが高まる
- 顧客満足度の低下:プロジェクトがクライアントの期待に応えられない場合、顧客満足度は著しく低下する。将来的に企業の評判に悪影響を及ぼし、将来のビジネスチャンスを損なう
顧客が満足するほどのソリューションを提供できない
顧客のニーズに応えることができない、または期待される品質の製品やサービスを提供できない企業は、市場での競争力を失い、「終わっている」と見なされることがあります。
顧客のニーズに応えられない、または期待される品質を提供できない企業は、以下のような問題に直面しています。
- 市場での競争力の喪失:顧客の要求に対応できない企業は、他社との競争において不利になり、新規顧客の獲得や既存顧客の維持が困難になる
- 評判の低下:製品やサービスが顧客の期待に達しない場合、その評判はニュース記事やSNSを通じて素早く広まり、企業のブランド価値に悪影響を与える
SIer企業を選ぶ際には、顧客満足度を高める能力があるかどうかを慎重に評価することが重要です。
SIerへの就職を検討している人やキャリアアップに悩むエンジニアは、これらのポイントを参考にして自身のキャリアプランに合った企業選びを行いましょう。
SIer以外の5つの選択肢
「自分にはSIerで働くことは合わなさそう。でもエンジニアとして働きたい。」
という人は、SIer以外の選択肢に目を向けてみるのも良いでしょう。
SIer以外のキャリアパスを検討している方々に向けて、以下の5つの選択肢を詳しく解説します。
- SESエンジニア
- 自社開発エンジニア
- 社内SE
- ITコンサルタント
- フリーランスエンジニア
SESエンジニア
SES(システムエンジニアリングサービス)エンジニアは、顧客企業に常駐し、システム開発や運用を行う職種です。
SESエンジニアは、多様なプロジェクトに参加する機会があり、幅広い技術や業界知識を身につけることができます。
一方で、プロジェクトごとに異なる職場環境に適応する柔軟性が求められることもあります。
自社開発エンジニア
自社開発エンジニアは、企画・設計・開発・テスト・運用まで、製品やサービスのライフサイクル全般に関わることができる職種です。
自社製品に深く関与するため、製品への愛着や達成感を得やすいですが、一方で製品の成功に対する責任も大きくなります。
社内SE
社内SEは、自社内の情報システムの開発・運用・管理を行います。
社内ユーザーの要望に応えるソリューションを提供し、業務効率化に貢献することがおもな役割です。
社内のIT環境を深く理解することができ、安定した職場で働ける可能性があります。
ITコンサルタント
ITコンサルタントは、企業のビジネス課題を解決するために、IT戦略の立案やシステム導入の支援を行います。
高度な専門知識とビジネススキルが求められ、企業の経営層と直接関わる機会も多いです。
そのため影響力が大きくやりがいを感じることができ、さらには一般的に高年収ですが、プレッシャーも相応に大きい職種です。
フリーランスエンジニア
フリーランスエンジニアは、個人事業主として独立し、複数のクライアントから仕事を受注します。
高い専門性を活かして、自由な働き方を実現できる一方で、案件獲得のための営業活動や収入の不安定さなど独立に伴うリスクも存在します。
はじめはSES企業で実務経験を積み、スキルを磨いてフリーランスとして独立するなどのキャリアプランも良いでしょう。
これらの選択肢は、それぞれにメリットとデメリットがあります。自分のキャリアビジョンや働き方に合った選択をすることが重要です。
また、SIerが終わっているという意見もありますが、業界の動向や個々の企業の状況をしっかりとリサーチし、自分にとって最適な環境を見極めることが大切です。
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まとめ|SIer終わってるは言い過ぎ。徹底リサーチでホワイト企業を見つけよう
この記事では、以下のことがわかりました。
- SIerは終わっていると言われる理由は「多重下請け構造」「システム開発の丸投げ」「昔ながらの古い体質」など
- SIerの存在意義は「複雑なシステム開発の実現」「ITコンサルティング」「DXの推進」などの要素が挙げられる
- 終わっているSIerを見分けるポイントは「多重下請け構造の下位に位置する」「法令やエンジニアの権利を守らない組織体質」など
「SIer終わってる」という言葉は、業界全体を否定するものではなく、むしろ改善すべき点を指摘し、より良い方向へ導くためのスタートラインと捉えることができます。
大切なのは表面的な情報に惑わされず、自分の目でしっかりと企業をリサーチし、自分に合ったホワイト企業を見つけることです。
そのためには、業界の動向を常にチェックし、多角的な視点から企業を評価することが求められます。
SIer業界にはまだまだ可能性があり、自分に合ったキャリアを築ける場所を見つけることができるでしょう。