直近担当させてもらうプロジェクトで、PMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)という役割を置くことになりました。
ですが、プロジェクトの現場では「PMOはいらない」「PMOはおしゃれな名前の事務員」と皮肉をいう人もいます。
この記事では
- 「PMOって本当に必要なのか」
- 「PMOのパフォーマンスを引き出す方法」
を考えてみましょう。
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【結論】PMOという役割がいらない訳ではない。PMO業務によって価値提供できるかが大切
- PMOとは、プロジェクトマネージャーの補佐
- PMOは「現場感の欠如」により不満に思われている
- AIの台頭によって、事務的なプロマネ業務はAIが肩代わりされる見込み
- PMOが必要とされるためには、価値があるPMO本来の業務に取り組むべし
PMOとは|プロジェクトマネージャーの補佐
まずはPMOの役割を確認します。
一般的なことをまとめていますので、PMOについてご存知の方は読み飛ばしていただければと思います。
≫次の章へスキップ|PMOはなぜ「いらない」と言われるのか
PMOの役割
PMOは、プロジェクト・マネジメント・オフィスと言われるプロジェクトマネージャーの補佐を行う部署、または役割です。
「組織の部門としてPMOがある」パターンと、「個別プロジェクト内のプロマネの補佐」として設置するPMOの役割ことをさすパターンがあります。
今回の記事では、後者の「個別プロジェクト内のプロマネの補佐」のことについて書きます。
極論ですが、チームメンバー全員がプロジェクト全体を俯瞰して効率的にプロジェクト推進できるならプロマネやPMOは不要です。
一方で、システム構築は業務・アプリ・インフラなど各分野で高い専門性が求められるため、専門家たちがそれぞれの役割に集中できるように取りまとめ役としてプロマネは必要です。プロジェクト規模が大きくなるとプロマネを支援するPMOが必要となります。
PMOの業務内容
プロジェクトの主な業務内容は以下のとおりです。
①プロジェクト状況の取りまとめ
進捗や品質(レビューやテスト結果)、課題の集計・報告資料の作成を行います。プロジェクト状況の「見える化」と言われる業務です。
②プロジェクト横断的なノウハウの共有
PMOは複数のプロジェクトを横断的に対応し組織内でノウハウを蓄積します。蓄積したノウハウを各プロジェクトにフィードバックして全体的な効率化を図ります。
③プロジェクトマネジメント人材の育成
PMOはプロジェクトマネジメントのノウハウをプロジェクトにフィードバックし、プロジェクトマネジメントを行える人材を育成します。
④他、プロジェクトマネージャー業務の支援
プロネクトマネージャーの業務は多岐に渡ります。PMOはプロジェクトマネージャーの補佐・代理として支援を行います。
上記は一般的なPMOの業務内容です。実際には組織によって異なることもあります。
プロジェクトマネージャーとPMOの役割の違い
どちらもプロジェクトマネジメントに携わる役割ですが、それぞれで立ち位置が違います。
プロジェクトマネージャーは、プロジェクト全体を俯瞰して推進するプロジェクトの管理者。
PMOは、プロジェクトマネジメントの支援を行う役割のことです。
プロジェクト体制図では、PMOはプロマネの横もしくは下に表現されることが多いです。
PMOはなぜ「いらない」と言われるのか
実際にうまく機能しているケースがあるのでPMOという役割が存在しているのだと思います。では、なぜ「PMOはいらない」と嫌われ存在意義を問われてしまうのかを考察してみます。
PMOに対する現場の不満(嫌われてしまうPMOの特徴)
私の職場におけるPMOの状況をまとめみます。
現場感の欠如(事務的に感じる)
各チームからの進捗や品質の報告を受けて、全体報告資料に取りまとめることが主な業務になっていると厳しいです。
機械的に集計した結果について、「指標値(この範囲に収まっていることが多いという値)を上回っているor下回っている」などという当たり前の報告を返すだけ。さらには、忙しい現場へ「急いで原因と対策を報告して」と迫ってくるようなPMOであれば嫌われてしまっても仕方ないです(こんな極端な方はいないと思いますが)。
これならツールに任せたほうが良いし、プロジェクトに適したツールがないなら、事務作業の派遣社員さんを契約して来てもらったほうがいいです(エンジニアより単金が低くて事務処理能力が高いアシスタントさんは大勢います)。
プロジェクトの現場は毎日必死です。現場を理解しようとせず、事務的に杓子定規なことを言ってくる。しかもプロジェクト単体での責任は重くないのに工数をどんどん使ってしまう。という振る舞いであればプロジェクトメンバーの理解を得るのは難しいです。
プロジェクトへ行動を促すフィードバックの不足
PMOは、集計などの事務手続きがメイン業務ではありません。プロジェクトが上手くいくか・失敗するかは、その事務手続きの先にあります。
ただただ進捗や品質、課題状況などの集計作業を行うのならプロジェクトに対する価値は低いです。過去には、丁寧に品質指標と実績値のグラフや、課題の消化状況、スケジュールの進捗線などをたくさん印刷してプロジェクトルームに貼るという人までいました。
残念なのが見える化して”ここで終わり”ということです。「見える化」はとても大切なのですが、その先がもっと大切。管理というのは、集計した結果から課題や改善などを整理してアクションを考えて実行することです。PMOが別プロジェクトの横断的なノウハウも踏まえて、取るべきアクションの案を提案するなど主体的に動いてくれるとプロジェクトから感謝されます。
PMOを担当している人の不満
PMOはプロジェクトを横断的に担当することが多いので、個別プロジェクトに集中して張り付けないことが多いです(少なくとも私が働く会社ではそうのような状況です)。
複数プロジェクトを担当していると、目の前の事務作業に追われて本来PMOがやるべき業務まで手が届いていないことが考えられます。
また、プロジェクトマネージャーは自身が担当するプロジェクト主観的に振る舞うことがどうしても多いので、PMOからみると「現場側は、全体を俯瞰せずにわがままばかり言ってくる」と捉えて不満に思うことも多いのではないでしょうか。
PMO担当も本来やるべき業務までやれてない・やりたくない・きついと葛藤しながら働いている人も多いかもしれません。
PMOが空回りしてしまう原因
それぞれのプロジェクトの状況によって、PMOが空回りしてしまう原因は様々だとは思いますが、これまでに私が関わったPMOのケースを振り返ってみます。
空回りの主な原因は「プロジェクトとして、PMOの役割・業務内容があいまい」というところです。PMOは「必ずこれをやる」というタスクが定義されているわけではないので、各プロジェクトで「PMO担当はできる範囲でやれることをやる」になっていることが問題です。
そのため、プロジェクトマネージャーとPMOの間に「ここまでやってくれないの?」「ここからはできない」と双方で認識の行き違いが発生しています。
お互いのためにプロジェクト計画を策定するときに、プロジェクトマネージャー・PMOそれぞれの役割・作業分担を明確に定義しておくべきです。プロジェクト計画で定義して、プロジェクトを実行しながら「私がこの作業は引き取るよ」などと状況に応じて連携して上手くプロジェクト推進できる姿が理想です。
AIによってプロマネ業務の80%が無くなる!?
米調査会社のガートナーは、2030年までにプロジェクトマネジメント業務の80%をAIが対応可能になるという予想を発表しました。
Gartner Says 80 Percent of Today’s Project Management Tasks Will Be Eliminated by 2030 as Artificial Intelligence Takes Over(引用:ガートナーMarch 20, 2019)
この予想では、AIを活用したプロジェクト管理ツールの進歩によって2030年にはプロマネ業務の大半を占める「データの収集、分析、および報告はAIによって行われる。そしてプロマネはAIを管理できる人員をチームに配置するようになるだろう。と発表しています。
最近では日本でもプロマネ支援AIの現場活用が進んでいます。
参考:日立とTISが「プロマネ支援AI」を現場導入、進捗監視や成功率予測の効果とは(日経クロステック 2022.08.16 有料会員限定記事)
AI導入に当たって必要なスキル
AIを導入すればプロジェクトマネジメントのほどんどを任せられるかというと、そうではありません。では、どんなスキルが必要になるのかを考えてみましょう。
AIを使ったプロジェクトマネジメントの基礎知識
AIを使ったプロジェクトマネジメントを導入するには、まずAIの基礎知識が必要です。
AIによってどのような作業が自動化され、どのような作業が人手によって行われるのかを理解する必要があります。
AIを使ったプロジェクトマネジメントの基礎知識を身につけることで、AIを活用する上での課題やリスクを理解することができます。
AIを使ったプロジェクト管理のスキル
AIを使ったプロジェクト管理には、AIによるリスクの予測や作業実績の評価を行うスキルが必要です。
AIによるプロジェクト管理は、従来の方法に比べてより正確なリスク予測や作業実績の評価が可能となりますが、AIによる予測結果に対する検証や解釈が必要となります。
最近のAIって実際どうなの?
前述のAIがプロマネ業務を肩代わりしてくれる記事を見つけてネットサーフィンしていると「最近のAIって実際どうなんだろう」と思いたって無料のものを使ってみました。
…最近のAIの精度に非常に驚きました。
私が勤める会社もAIを自社開発していて、自前のAIを活用したソリューションがあったりするのですが、使ってみても「ふーん。すごいなー。でもまだ実用的ではないな」というくらいの印象でした。
一方で、世界の先端にいる企業のAIは無料のモノでもすごい。実用的というレベルまできています。
最近、話題のChatGPT(無料)を使ってみた
ChatGPTは米サンフランシスコOpenAI社のAIチャットボットです。OpenAIのアカウントを作成すれば無料で使うことができます(2023.2.3時点では無料ですが、近々に有償化されるという噂もあります)。
AIでテキストを作成してくれる人工知能ツールということで、会話形式の質問に応えてくれたり、ちょっとした物語も描いてもらうことができるらしいです。
ということで使ってみました。
キックオフ会議でやるべきことを聞いてみた
質問(きなこ):プロジェクトのキックオフ会議でやるべきこと
回答(ChatGPT):プロジェクトのキックオフ会議は、プロジェクトの開始段階で重要なミーティングです。この会議では、以下のようなことを行うことが一般的です。
1.プロジェクトの目的と目標の確認: プロジェクトの目的と目標を確認し、すべてのステークホルダーが同じ理解を持っていることを確認します。
2.プロジェクトのスコープの確認: プロジェクトのスコープを確認し、すべてのステークホルダーが同じ理解を持っていることを確認します。
3.プロジェクトのタイムラインの確認: プロジェクトのタイムラインを確認し、すべてのステークホルダーが同じ理解を持っていることを確認します。
4.プロジェクトのリソースの割り当て: プロジェクトのリソースを割り当て、すべてのステークホルダーが同じ理解を持っていることを確認します。
5.進捗管理の方法の確認: プロジェクトの進捗管理の方法を確認し、すべてのステークホルダーが同じ理解を持っていることを確認します。
6.問題解決の方法の確認: プロジェクトにおいて問題が起きた際の解決方法を確認し、すべてのステークホルダーが同じ理解を持っていることを確認します。
これらはキックオフ会議で行う一般的なタスクですが、プロジェクトや組織によって異なることもあります。
テスト結果について相談してみた
質問(きなこ):システム開発のテスト結果が品質指標に収まっていない。どうすればいい?
回答(ChatGPT):システム開発のテスト結果が品質指標に収まっていない場合、以下のような手順を踏むことができます。
1.問題の発生原因の特定: 問題が発生した原因を特定することが重要です。コードのバグ、テスト環境の誤り、要件の誤りなどが考えられます。
2.問題の修正: 原因が特定された場合、問題を修正することが必要です。この作業は開発チームによって行われます。
3.再テスト: 問題が修正された場合、再度テストを行い、品質指標に収まっていることを確認することが必要です。
4.問題の再発防止: 問題が再度発生しないよう、プロセスの改善や新たなテスト手法の導入など、問題の再発防止策を講じることが必要です。
これらは一般的な手順ですが、問題の種類や規模に応じて異なることもあります。問題解決に必要なアクションを正確に判断することが重要です。
一般的な応答だったり、一部文章がおかしいところもありますがこれは情報が蓄積してAIが学習していくともっとナチュラルになっていくはずです。
感想としては、無料のものでも実用的なレベルまできていると感じました。これで無料。
有償ツールとしてAIを組み込むなどで、ガートナーが予想している「2030年までにプロジェクトマネジメント業務の80%をAIが対応可能になる」というのはかなり現実的だと感じました。
ガートナーの予想が発表されたのは2019年3月20日。コロナ感染拡大のパンデミックの影響もあって世界では急速にリモートワークへのシフトなど労働環境や働く人の価値観も大きく変わっています。予想よりも早まるかもしれないですね。
PMOが必要とされるためには|価値があるPMO本来の業務
前述のとおり、プロマネ支援AIの台頭によって事務的なプロマネ業務は近い将来AIが担ってくれる見通しです。では、必要とされるPMOの在り方を考えてみましょう。
管理業務を行う(事務作業の先)
集計作業や報告書作成などの事務作業の先にある、原因分析や改善策の提案などプロジェクト現場のアクションを促すようなフィードバックが行える必要があります。
プロジェクトマネージャーの代行
プロジェクトマネージャーは、関係者が多いという特性から打ち合わせが多いです。顧客や経営層のみへの報告だけでなく、他部署の連携や取引先との交渉、こまめな社内報告などやることが膨大にあります。
そこで、PMOがミーティングや報告を引き受け、結果をフィードバックするなど一部推進役を引き受けてくれると価値は高いです。
他にも代行できる要素はたくさんあります。
例えば、課題管理では、課題に期限を記入するだけではダメです(それすらやってないプロジェクトもありますが…)。課題は放置しても解決しません。解決を阻害する原因があるからです。
課題管理は、プロマネやPMOがファシリテーションして各メンバーが解決できるように阻害要因を解消しながら推進する。というところまでやるのが仕事です。
進捗管理もコスト管理も、品質管理同じようなものです。集計だけでなく「その先」が大切です。
プロジェクト横断的なノウハウの提供
私の職場では、PMOは複数プロジェクトを掛け持ちで支援しています。それは、プロジェクトを横断的に対応することでノウハウ展開する機能を担っているからです(だと思う)。
システム開発や運用は、プロジェクト共通の課題は往々にしてあります。
例えば、OSのバージョンアップなどがあります。プロジェクト単発で同じ課題を対応していては非効率なため、PMOがプロジェクト横断的にノウハウを展開することで組織全体のプロジェクトマネジメントの質の向上をはかります。
他プロジェクトから流用できそうな成果物、教訓、作業を進める際のベストプラクティス(最も優れた手法)を提供することで価値を提供します。
まとめ:PMO「いらない」は言い過ぎ。本来のPMO業務はバリューがある
今回の記事では、”PMO業務によって提供できる価値が大切”というお話しをさせていただきました。
PMOの価値を引き出すには、PMOとして働く人だけでなく、プロジェクトとして役割分担を明確にしてバリューを引き出すことが重要です。
PMOのパフォーマンスを最大限発揮してもらい、安全なプロジェクト推進を目指していきましょう!
最後まで読んでくれてありがとうございました。