『SIerを辞めたい』経験者が語る辞めたくなったホンネと対処法

SIerを辞めたい。経験者が語る辞めたくなったホンネと対処法

SIerで働いていると、辞めたいと思うことってありませんか?

実は筆者も、SIerに入社して14年間、何度も「辞めたい」と思ったことがありました。

この記事では、筆者自身の「辞めたい」と思った経験談からはじまり、ほかにSIerを辞めたいと感じた人たちの理由を独自リサーチした結果を紹介します。
さらに、辞めたいと感じたときに取るべき対処法や、SIerのスキルを活かせるキャリアパスなどを解説していきます。

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この記事でわかること
  • SIerを辞めたいと思った筆者の経験談として「自社製品の企画業務」「働かないおじさんとのチーム運営」「妊娠中の炎上プロジェクト対応」を紹介
  • SIerを辞めたい理由を独自に調査したところ、20代は「スキルが身につかない」、30代は「やりがいを感じない」、40代/50代では「早期退職が好条件」がもっとも多かった
  • SIerを辞めたいと思ったら、「まず休憩する」「辞めたいと思う原因を考える」「根本的な対策に取り組む」の順に取り組むことが重要
目次

SIerを辞めたいと思った経験談3選

筆者は新卒で国内大手SIerに入社し14年の経験があります。
その中で、何度も辞めたいと思うことがありました。

辞めたいと感じた実際の経験談を3つにしぼってご紹介します。

  1. 延々と続く自社製品の企画業務
  2. 「働かないおじさん」とのチーム運営
  3. 妊娠中の炎上プロジェクト対応

1.延々と続く自社製品の企画業務

SIerを辞めたいと思った経験談のひとつとして、社内の承認プロセスに時間とエネルギーを取られ過ぎることで、実際の業務に集中できないというケースがあります。

規模が大きくなるほど、承認を得る必要のある関係者や部署が増えるため、資料作成や会議、事務手続きなどの事前準備作業が膨大です。
しかし、実際にやっていることは事務的なことが多く、こうした承認プロセスに費やした時間と労力が過剰に感じられることもあります。

とくに、新規開発の企画業務は、着手から実際にプロジェクトをスタートするまでに半年以上の時間を社内承認プロセスに費やすこともあります。
社内承認プロセスは、実際の開発作業に比べて、重要性が低いにもかかわらず多大な時間と労力が必要です。

この承認プロセスが、ユーザーのことを考え、自社の投資効果を真剣に議論する場となっていればいいのですが、形式的で非効率なものも多くあります。
承認プロセスに時間をかけずプロジェクトを開始していれば、要件定義工程や設計工程くらいまで完了できていたのでは。と感じているのがホンネです。

非効率的な社内プロセスに時間を取られ過ぎると本来の仕事に集中できず、市場に対して価値を提供できていない焦燥感をおぼえます。
慢性的にこのような状況が続くと、SIerで働き続けていくべきかどうか将来に不安を感じてしまいます。

2.「働かないおじさん」とのチーム運営

価値観が異なる人と働くのはつらいです。
私の場合、自分より上のポジションの人が、成果物は一切出さずに第三者的なコメントばかりしていてしわ寄せがくると、大きなストレスを感じていました。

私は性格的には穏やかな方だと自負していましたが、おそらくそれが裏目に出て、その上司との相性が最悪でした。
結局、その人は何も手を動かさず、言いたい放題の状況が続いてしまったのです。

新卒入社して14年間、人間関係でこれほど苦しいと感じたことはありませんでした。
あまりのストレスで、顔の半分が一時的に麻痺してしまい、長期の治療を要する事態になってしまったほどです。

当時は精神的にも体力的にもボロボロの状態で、会社を辞めてしまおうかと真剣に考えるようになっていました。

3.妊娠中の炎上プロジェクト対応

筆者が妊娠中に、炎上していた大規模プロジェクトのリーダーを担当していたときはつらかったです。
体調がすぐれない中で、業務の調整をお願いすることに非常に気兼ねしていました。

同僚や上司も筆者をどう扱えばいいのかわからず、適切なサポートが受けられませんでした。
職場に女性が少なかったこともあり、私自身もこうした状況をどう打開すべきか迷ってしまい、誰に相談してよいかわからなかったです。

妊娠中の女性が業務を調整することは普通なことだと、今となれば思えます。
しかし当時は経験が浅かったこともあり、加えてプロジェクトが炎上している最中だったこともあり、なかなか調整をお願いできずにいました。

結果的に、無理をしてプロジェクトを何とか乗り切るのが精一杯でした。
とてもつらく感じていて、会社を辞めてしまおうかと真剣に考えたことを覚えています。

当時の状況は、過去の記事にまとめていますので、興味がある人は読んでみてください。

ここまでは、SIerを辞めたいと思った経験談をお伝えしてきました。

筆者以外のSIerを辞めたいと感じたことがある人は、どのような理由があるのでしょうか。
次の章で見ていきましょう。

SIerを辞めたい理由ランキング|TOPは「やりがいを感じない」

大手SIer(※1)を対象に、口コミサイト(※2)に掲載されている退職理由を年代別にリサーチしてまとめました。

※1:当記事に掲載している開発系SIerランキングの従業員数TOP3である(富士通日本電気NTTデータ)を対象
※2:転職会議openworkに掲載されている退職理由を年代別にランダムに30件ずつ集計

SIerを辞めた理由・辞めたいと考えている理由
SIerを辞めた理由・辞めたいと考えている理由

20代では、「スキルが身につかない:24%」「やりがいを感じない:21%」が上位の理由となっていました。

30代では、「やりがいを感じない:37%」「将来性が不安:27%」が1位と2位です。

40代/50代では、「早期退職が好条件:26%」が1位となっており、SIerでは早期退職で退職金が上乗せされるなどの要因で辞めた人も一定数いることがわかります。

全年代をとおして、「やりがいを感じない」が上位の理由となっており、SIerの勤務環境への不満が伺えます。

一方で、「給料が安い」という理由については、今回のリサーチでは全年代で1つも回答がありませんでした。
収入に不満を持っている人が少ない傾向にあることも、SIerを辞める理由の特徴だと言えます。

20代で1位の理由であった「スキルが身につかない」に関して、以下の記事でくわしく解説しています。
興味がある人は読んでみてください。

SIerを辞めるべき?向いている人と向いていない人の特徴

SIerを辞めるべきかどうかは、個々の状況やキャリアの目標によって異なりますが、一般的には以下のような特徴を持つ人がSIerに向いている、または向いていないと言えるでしょう。

SIerに向いている人の特徴

まずは向いている人の特徴を見ていきましょう。

大規模システムの構築に関わりたい人

SIerは多くの場合、大企業や官公庁などの大規模プロジェクトを手がけることが多いです。
これらのプロジェクトに興味があり、それに関わることでスキルを磨きたいと考えている人には適しています。

プロジェクトマネジメントに興味がある人

SIerの仕事は技術面だけでなく、プロジェクトを管理し、チームを率いることも求められます。
マネジメントスキルを伸ばしたい人には良い環境です。

ITで顧客の課題を解決したい人

顧客のニーズを理解し、それを満たすためのシステムを設計・構築することにやりがいを感じる人には、SIerは非常に適した職場です。

向いていない人の特徴

続いて、別の職種の方が適性がありそうな人の特徴を紹介します。

コーディングをメインで行いたい人

SIerでは上流工程が中心であり、コーディング作業は比較的少ないか、外部の下請けに委託されることが多いです。
コーディングをメインに行いたい人には不向きかもしれません。

コミュニケーションを取るのが苦手な人

SIerの仕事は顧客とのコミュニケーションが多く、これが苦手な人はストレスを感じやすいかもしれません。

自社製品やサービスを開発したい人

SIerはクライアントの要望に応じたシステムを構築するため、一般的には自社製品の開発は少ないです。
自社製品を作りたい人は、自社開発エンジニアの方がより適性があると考えられるでしょう。

これらの特徴をふまえ、自身がSIerでの仕事に対してどのような感情を持っているか、何を求めているかを考えることが大切です。

SIerを辞めたいと思ったときには、自分のキャリアプランや今後の目標についても再考する良い機会かもしれません。

SIerエンジニアの今後の需要予測。本当に辞めるべき?

SIerエンジニアを取り巻く環境は変化が激しく、今後の需要予測については、以下のポイントを考慮する必要があります。

  1. クラウドサービスの普及
  2. IT人材の需給バランス
  3. 大規模プロジェクトへの対応力
  4. SIerのビジネス領域の変化
  5. 高コスト体質の問題

結論としては、SIerを取り巻くビジネス環境の変化は激しいですが、大規模プロジェクトへの対応ニーズをはじめとした需要は今後も続くと考えられます。

それぞれ見ていきましょう。

1.クラウドサービスの普及

クラウドサービスの成熟により、従来のSIerが担ってきたインフラ構築の需要が変化しています。

多くの企業がクラウドサービスを利用することで、スクラッチ開発の必要性が低下しています。
SIerも従来型ビジネスから、クラウドシフトが必要です。

参考:企業におけるクラウドサービスの利用動向|総務省

2.IT人材の需給バランス

IT人材不足が叫ばれる一方で、「従来型のIT人材」は供給過多になる可能性があります。
生き残るためには、「先端IT人材」としてのスキルを身につけることが重要です。

参考:IT 人材需給に関する調査|経済産業省

3.大規模プロジェクトへの対応力

政府系機関や公共性の強い事業者、金融機関などの大型プロジェクトは、人手が必要であり確実性が求められるため今後もSIerでなければ受注できないでしょう。

このため、SIerの需要が完全になくなることは当分ないと考えられます。

4.SIerのビジネス領域の変化

総務省によると、企業がDX(デジタル・トランスフォーメーション)を進めるうえで、もっとも大きな課題は「人材不足」です。

SIerはシステム関連の専門家として従来のシステム開発のみでなく、企画や運用・保守を含めたコンサルティングなど、従来の領域以外への需要が生まれていると予想されます。
これにより、SIerの役割も変化していくでしょう。

参考:令和4年情報通信に関する現状報告の概要|総務省

5.高コスト体質の問題

大手SIerはプロジェクトの規模が大きくなるほどコストが増加する傾向にあり、これがSIerのビジネスモデルに対する懸念となっています。

また、開発したシステムが必ずしも期待通りの効果を発揮するとは限らないため、コストパフォーマンスの観点からも課題があります。

この問題のもっとも大きな要因は、SIerの多重下請け構造です。
多重下請け構造は以下の記事でくわしく解説しているので、興味があれば読んでみてください。

これらの点をふまえると、SIerの需要がすぐになくなることは考えられず、十年から十数年先の将来性はひとまず問題ないと言えるでしょう。

SIerエンジニアとしてのキャリアを続けるかどうかは、個々のスキルセットやキャリアの目標によって異なります。

ただし、SIerエンジニアとして将来性を高めるためには、クラウド・AI・IoTなどの新しい技術領域に対する理解を深め、それらを活用できる能力を身につけることが重要です。

また、SIerを辞める場合でも、これまでの経験を活かせるキャリアパスは多岐にわたるため、自身の興味や強みを生かした選択をすることが求められるでしょう。

SIerを辞めたいと思ったときによく考えるべき3つのこと

SIerを辞めたいと考えた際に考えるべきポイントは以下の3つです。

  • まずはじめに取り組むべきことは「休憩」
  • 辞めたいと思う原因を考える|辞めたいのはプロジェクト?役割?会社?職種?
  • 根本的な対策として取り組むべきこと|キャリアプランと転職活動

それぞれ解説します。

まずはじめに取り組むべきことは「休憩」

SIer業界ではプロジェクトの期限や顧客の要求に追われ、長時間労働が常態化していることが多いです。

燃え尽き症候群やストレスが原因で辞めたいと感じる前に、一度立ち止まって休息を取ることが重要です。
休憩を取ることで心身をリフレッシュし、客観的な視点を取り戻せます。

辞めたいと思う原因を考える|辞めたいのはプロジェクト?役割?会社?職種?

原因によって、取るべきアクションは変わってきます。

プロジェクトや現在の役割にフィットしていないなら、プロジェクトや役割を変更してもらう、もしくは部署異動が選択肢になります。

今勤めている会社の文化や体質に馴染めないなら、転職を検討するべきでしょう。

SIerエンジニアとして働くこと自体に不満があるならば、キャリアチェンジも視野に入れる必要があります。

このように、辞めたい理由によって対処法は異なります。原因を明確にすることが重要です。

根本的な対策として取り組むべきこと|キャリアプランと転職活動

前述の2点をふまえて、根本的な対策を練る必要があります。

中長期的なキャリアプランを立て直し、行動に移すべきです。
転職や職種転換を検討するのであれば、並行して転職活動に着手することになります。

つまり、まずは休憩を挟み、問題の核心を探ったうえで、キャリアプランの見直しと具体的な行動に移すことが大切だと言えます。
焦らずに順を追って対処することが重要です。

次では、SIerの経験を活かせるキャリアパスを考えてみましょう。

SIerの経験を活かせるキャリアパス4選

SIerを辞めたいと思ったとしても、そのスキルや経験は無駄にはなりません。
SIerとして身につけた知識は、さまざまな分野で活かせます。

ここでは、SIerの経験を活かせるキャリアパスとして4つの代表例を挙げます。

  • 社内SE
  • 自社開発エンジニア
  • ITコンサルタント
  • フリーランスエンジニア

社内SE

SIerから社内システムの企画や運用管理を担当する社内情報システム部門(社内SE)へ転身するのがひとつの選択肢です。
ユーザー企業の目線を持てるようになり、システムの上流工程から関われるメリットがあります。

自社開発エンジニア

システム開発の上流から下流までを一気通貫で経験できるのが、パッケージベンダーやクラウドサービス企業の自社開発エンジニアです。

自社製品に込められた思想を体得でき、技術の深堀ができます。

ITコンサルタント

SIerで培った業務知識とITの知見を生かし、ITコンサルタントに転身するのもひとつの道です。

技術者としてだけでなく経営に深く関われ、コンサルスキルを身につけられます。

フリーランスエンジニア

最後は自由度が高く、報酬面でもメリットがあるフリーランスエンジニアです。
プロジェクトに合わせて就業スタイルを選択でき、SIerよりも柔軟に働けます。

このように、SIerで培った経験を無駄にすることなく、さまざまな選択肢があります。
自身のキャリア観や人生設計に合わせて、ベストな道を見つけることが大切です。

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現在は多くの転職エージェントがありますが、実績豊富なレバテックキャリアを利用すれば、希望に合った求人を逃すリスクを経験できます。

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まとめ|SIerを辞めたいと思ったことを機にキャリアプランを考えてみよう

この記事をとおして、以下のことがわかりました。

  • SIerを辞めたいと思った筆者の経験談として「自社製品の企画業務」「働かないおじさんとのチーム運営」「妊娠中の炎上プロジェクト対応」を紹介
  • SIerを辞めたい理由を独自に調査したところ、20代は「スキルが身につかない」、30代は「やりがいを感じない」、40代/50代では「早期退職が好条件」がもっとも多かった
  • SIerを辞めたいと思ったら、「まず休憩する」「辞めたいと思う原因を考える」「根本的な対策に取り組む」の順に取り組むことが重要

辞めたいと思う気持ちは、キャリアを見直し、さらにステップアップする素晴らしいきっかけとなり得ます。

一時の感情に流されるのではなく、冷静に自身の適性や目指すべき方向を見極め、新たなキャリアプランを築いていきましょう。

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この記事を書いた人

国内大手SIerに新卒入社し、現在もプロジェクトマネージャーとして働いています。
自社製品開発・受託開発、企画〜開発〜運用保守まで幅広く経験してきました。
ワーママとして日々忙しく働きながらも、なんとか充実した生活を送れています。
実際に働いているからこそわかるリアルな情報や、私自身が転職活動を通じて得たIT業界の知識をわかりやすく発信していきます。

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