女性ITエンジニアが妊娠した時に考えるべきこと|経験者が解説

「妊娠したけど、自分の都合を仕事に持ち込んでいいのか分からない」
「プロジェクトの現場に女性がいない…。相談しづらいな」

これは私が二人目を妊娠したときに悩んだことです。

当時私は炎上プロジェクトのリーダーを担当していてとても戸惑いました。

忙しいプロジェクト現場で個人の都合を主張するのは勇気がいりますが、考え方を整理することで仕事と妊娠を両立する不安を和らげることができます。

この記事では、女性ITエンジニアが妊娠したときに考えるべきことを紹介します。

私には三人の子どもがいますが、今もなんとか現役でITエンジニアを続けています。妊娠による仕事との調整で悩まれている方の一助になるとうれしいです。

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目次

この記事の筆者|きなこ

  • 現役のプロジェクトマネージャー
  • 国内大手Sier勤務(2022年売上ベース国内最上位)。13年目
  • プロマネ歴1年を経過。初心者プロマネ
  • 3児のママ
  • 30代半ば  

【結論】妊娠による業務調整は遠慮することじゃない。早めの相談を

《この記事のポイント》

  • ITエンジニアのうち女性は全体の20%ほど。女性が少ないと困ることも多い
  • 事例として妊娠時のエピソード・学んだことを紹介

そもそも女性ITエンジニアは少ないのか?|女性は全体の20%

情報サービス産業協会が発表した「情報サービス業基本統計調査(2021年版)」の報告によると、ITエンジニアにおける女性の割合は20%ほどとのことでした。
参考:情報サービス産業協会 情報サービス業基本統計調査

IT業界の中でも専門分野により偏りはあると思いますが、全体的には女性のITエンジニアは5人に1人ほどです。

ITエンジニアに女性が少ない理由

理系の仕事は男性的との風潮

これは文化といいますか歴史的にと言いますか、技術系の仕事は女性には不向きとされるイメージが強いために女性が技術系の職に就くことは一般的でないとの風潮があります。

ITも思いきり技術職であるため、女性の割合は少ないです。

ITエンジニアは長時間労働の傾向

開発プロジェクトでは納期必達ですし、運用保守プロジェクトでは時間外や休日問わずシステムトラブルなどの緊急対応を余儀なくされます。

そのため、女性が子育てと両立しづらい側面があります。

お手本となる先輩が少ない

もともと女性ITエンジニアは全体の20%ほどですが、出産を機に退職したり事務職へ異動する人が多いため、子育てしながらITエンジニアを続けている人は更に少ないです。

私は子どもが三人いながら現場でITエンジニアを続けていますが正直かなりしんどいです。夫が家事育児に協力的で、そのうえ職場環境に恵まれているためになんとか続けられている状況です。

給与など待遇が良い。そもそもITエンジニアの仕事が好き。という理由で続けています

現在は時短勤務で働いています。一日の流れを記事にまとめていますので、興味ある方は読んでみてくださいね。
時短勤務は辛い!?一日のタイムスケジュールを公開|SEと子育ての両立

女性ITエンジニアが少なくて困ること

男性中心の土壌がつくられているため女性が参入するハードルが高い

ITエンジニアは男性中心である会社がほとんどです。

例えば長時間労働などは女性中心の職場では成り立たないと思います。子どもの送迎などでどうしても退社しないといけません。

全然関係ないですが、大学生のころに夢見ていたおしゃれなカフェでランチするとかは皆無です。上司と一緒に食堂とか行って昼休みも仕事の話しをしてます

多様性が欠如する

多様性が欠如すると、結果として顧客ニーズへの対応力に影響します。ITエンジニアは顧客の要望や課題を解決するためにシステムを提供します。

しかし、顧客は多種多様でありその中には女性も多く含まれます 。女性の視点や感覚を持ったITエンジニアが少ないと 女性向けや女性特有のニーズへの対応力が低下する可能性があります 。

例えば、妊娠・出産・育児・介護など女性に関わるライフイベントやサービスへの理解度や共感度が低かったり 女性らしさや美しさという価値観への配慮が欠けたりすることもあるかもしれません。

これらはユーザー満足度を下げるだけでなく システム自体の品質や安全性にも影響する可能性があります。

出世や昇進に不利

差別しているわけでは無いと思いますが、実際に出世や昇進に女性ITエンジニアは不利だと感じます。産休や育休で長期間休職することがありますし、子育て期は長時間労働が難しくなり高評価を得ることが難しくなります。

特に古い体質の日系大手Sierは、いまだに仕事の成果で評価されるというより長時間労働で会社に忠誠している人の方が評価される傾向があると感じます。

男性が多数を占め、男性同士での情報共有や人間関係が構築されているので女性社員にとって不利な状況も生じやすいです。

将来像をイメージしづらい

出産後もITエンジニアとして現場に残っている女性は少ないです。

女性ITエンジニアのキャリアのお手本とする先輩が少ない上に、現場に残っている方も参考にしずらくて困りました。

私の職場にいる先輩の女性ITエンジニアは、鬼のように働いて出世しています。お腹が大きくても連日深夜まで働き、産後3か月で復帰。復帰後も連日深夜まで働いています。

会社はこの先輩をモデルケースとして社内報で紹介していました。

働き方や価値観は人それぞれです。このケースをお手本とされても私はついていけません。むしろ小さい子どもがいるのに帰宅せずに深夜まで働いている人は正直レアケースだと思います。

当時はここまでやらないと現場に残れないのか。と思って、育休後は現場にITエンジニアとして復帰するか、事務職へ異動を希望すべきか悩みました。

【私のエピソード】女性ITエンジニアが少なくて困った|妊娠のつらさが伝わらない

私にとって女性ITエンジニアが少なくて一番困ったことは、妊娠のときどのように仕事を調整するべきか相談相手がいなかったことです。

体を労わりたいけどプロジェクトの状況が良くなくて産休に入るまで毎日深夜まで働いていました。

自分の体やお腹の子どもより優先すべき仕事なんてないのに、混沌としていると何がなんだか分からなくなって働き続けてしまうんですよね。

私のエピソードと、この件で学んだことを紹介します。

プロジェクトの基本情報

実際の会社のプロジェクトの話しなので、特定できないように若干オブラートに包み一部内容を変更してご紹介します。ご容赦ください。

  • 顧客業務サブシステムの開発プロジェクト
  • 顧客要件とシステム仕様に行き違いが多発。プロジェクトが炎上
  • 開発規模:5千万円
  • 前任プロジェクトリーダーが休職(男性:40代半ば)。もともと持病があった模様

当時の部署は仕事が取れすぎて部署全体的にすごく忙しかったです。このプロジェクトで前任プロジェクトリーダーが休職することになり、代替要員を割り当てることができず妊婦の私に後任のプロジェクトリーダーとして参画の指示がきました。

妊娠を報告したタイミング

このプロジェクトに参画する前に、上司には妊娠を報告していました。

私としては、システムエンジニアは妊娠初期に伝えることが良いと思います。

妊娠初期に伝えることで、妊娠中に発生するつわりなど体調不良のリスクを事前に伝えることができて会社のサポートを仰げます。

また、産休の計画や出産後の復帰計画を立てることも大切です。

注意点としては、妊娠初期は流産のリスクが高いことです。上司とプロジェクト関係者のみに伝えるなど情報を伝える範囲を限定した方がいいと思います。

妊婦でも区別なく働いた

当時は部署全体的にものすごく忙しくて、組織としてかなり手一杯でした。

妊婦だと知っていても男性は何に配慮すべきか分からないため、他の社員と区別なく普通に仕事します。

当時の私は毎日8:30-22:00ごろまで働いていました。二人目の妊娠期だったため、上の子は夫に保育園の迎えなど諸々やってもらってました。

まっち(夫)
僕もフルタイムだったので、正直かなりきつかった

混沌としていて優先すべきことが分からなくなる

ふつうに生活できている時には考えられないけど、混沌とした状況だと何を優先すべきか分からなくなることがあります。

”自分自身とお腹の子” or ”仕事”のどっちを優先すべきか考えた時に、”仕事”を選択する人なんてほぼいないと思います。

忙しい毎日にずっと追われていると自分も周囲も客観的な判断ができず、当たり前のことが分からなくなることがあります。

そんな時はみんな余裕がありません。自分のことは自分で守らないといけません。

振り返ってみて思う学んだこと

個人都合を主張してはいけないという思い込み

忙しくなるとみんなプライベートを犠牲にして仕事に取り組みます。なので、私も個人都合を主張することに気兼ねしてしまい妊婦なのに激務。という状況になってしまいました。

自分自身やお腹の子より優先すべき仕事は無い

どんなに周囲が忙しく働いていても、割り切って業務調整しましょう。

”私の状況はこうなので、ここまでしか出来ません”ということを主張します。

立ち行かなくなって主張するのではなく、できるだけ早めに会社と調整しましょう。お手上げになる前に調整する方が会社にも親切です。

自分の課題、会社の課題に分けて考える

「上司に相談して業務調整しよう」と決心した後も戸惑いました。それは「代替案(じゃあ、どうする?)」が提示できなかったからです。

当時の部署がとても忙しかったことがあり、私がプロジェクトリーダーを降りる。となった時の代替案が思いつきませんでした。

当時の私は代替案を提示できないのに相談するのは申し訳ない。と思い込んでいました。

でも、この考え方は明確に違います。私の課題と、会社の課題がごちゃ混ぜになっています。

  • 私の課題→業務調整を相談するか否か
  • 会社の課題→相談を受けてどのように体制をつくるか

に課題を分離すべきでした。

実際に、私は産休を見据えて事前に業務調整を相談しました。
それを受けて、会社は、別の部署から後任のプロジェクトリーダーを割り当てました。

今思うと、もっと早めに相談しておけば良かったです。早い段階でプロジェクトリーダーでなく役割を下げても要員調整できたはずだし、プロジェクトには貢献できたはずです。

今になると”自分自身とお腹の子”を危険に晒してまで働く必要は無かったと思っています。

混沌としている状況であれば尚更、課題は分けて考えないといけません。

「課題を分けて考える」については、有名な本ですがアドラー心理学の「嫌われる勇気」が参考になりますので興味ある方は読んでみてください。「課題の分離」という内容で解説してくれています。

キャパオーバーは相談の切り出し方が大切

事前に業務調整することが理想ですが、混沌とした状態ではいつもなら出来ることが出来ない状況になることがあります。

私は業務調整が後手にまわってしまいました。その時に「相談の切り出し方が大切」だと感じました。

話の切り出し方として「もうこれ以上できません」「このタスクをやる時間がありません」「私は妊婦なのに毎日遅くまで帰れません」という自分視点から入るのは得策では無いです。

上司も疲弊しているので、感情的になる可能性があります。

それよりは、状況を全体像から説明していくことが大切です。プロジェクトの状況はこうで、どのタスクにどれくらい時間がかかっていて、どんな課題があるのかを説明します。

そして課題の一部として、私も産休に入る必要があるし体調が安定しないリスクがある。ということで対策を講じてもらいます。

上司へ相談する切り出し方としては、単独ではなくチームとしてどんな課題があって、どんな立ち振る舞いをすればうまくいきそうかを考えて巻き込む意識が大切です。

上司側の視点|言ってもらわないと分からない

正直、妊婦は体調が安定しないリスクがあるので上司としては「サポート役をつける」「上司自らフォローに入る」などの対策を講じることが一般的だと思います。

ですが、多忙な状況になってしまうとリスク対策を施せなくなる上司もいます。

ましてやシステムエンジニアは男性中心の業界なので妊娠など女性特有のことは言ってもらわないと分からない。ということも理解する必要があります。

女性ITエンジニアは少ないぶん、単純に分からないのです。相談してみるとすんなり受け入れてもらえることも多々あります。

今はリモート時代なので様子が「見えない」

今は在宅勤務やテレワークが中心です。妊娠してもお腹が大きくなっているなど対面だとすぐに分かる変化に気づかれないことも多いです。

リモートだと表情や雰囲気が伝わらないので、意識的に言葉にしたり文字にしてどんどん主張することが重要になっています。

寄り添ってくれない職場の場合。続けるべきか

妊娠・出産・育児に理解がない職場だと女性ITエンジニアが働き続けることは厳しいです。そういう職場で子育てしながら仕事を続けるのはとてもしんどいと思います。

現在ITエンジニアは売り手市場。待遇が良い職場に転職することも選択肢の一つです。

育休中に転職活動をはじめる

転職の希望条件を整理して、情報収集だけでもはじめておくことがおすすめです。

子育てしながらITエンジニアを続ける場合、「時短勤務・在宅勤務・フレックス」という条件が整っていると有効に使える時間が多く働きやすいです。

私が今この条件で働いていますので、もし興味ある方は私の標準的な一日をまとめた記事を読んでみてくださいね。
時短勤務は辛い!?一日のタイムスケジュールを公開|SEと子育ての両立

こんな希望条件の転職先なんて見つかるのかな…

と思っても、まずは転職エージェントに相談してみるといいです。

条件にあうオファーがなければ、必須条件・希望条件など優先度を明確にしてオファーを待つなどして調整します。

転職エージェントの担当者は諸々の相談に乗ってくれるのでまずは会話してみることをおすすめします。

まとめ:妊娠による業務調整は遠慮することじゃない。自分と会社のためにも早めの相談を

子育てしながら仕事するのは、誰かの力を借りないと成り立たないです。それは、子どもが生まれてからではなくて妊娠中からです。

私が早く帰ったり産休・育休で不在になると負担に感じた同僚もいるかもしれません。でも、それを気にし続けてもどうしようもありません。

前向きに、協力してくれた人たちに感謝することが大切だと思います。そして今度は、私が協力する側になった時に気持ちよく頼ってもらうようにしようと思っています。

この記事が少しでも役に立てるとうれしいです。
以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

国内大手SIerに新卒入社し、現在もプロジェクトマネージャーとして働いています。
自社製品開発・受託開発、企画〜開発〜運用保守まで幅広く経験してきました。
ワーママとして日々忙しく働きながらも、なんとか充実した生活を送れています。
実際に働いているからこそわかるリアルな情報や、私自身が転職活動を通じて得たIT業界の知識をわかりやすく発信していきます。

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